日本財団 図書館


日本の場合、その温室効果ガスの94.5%を二酸化炭素が占めているということで、大体は二酸化炭素だと思っていいわけであります。

 6つ目が、共同達成を認めると。これは、ヨーロッパにヨーロッパ連合、EUというのがございます。EUは15の国からなっているわけですが、それぞれに対して8%削減という、その義務が課せられているわけですが、全体として8%削減するということを認めようということなんです。ヨーロッパは、例えばドイツのような国は、「いや、うちは20%削減する」と。イギリスも、15%を削減すると。ただし、ポルトガルのように、まだまだ経済の発展の遅れた国がEUの中にもあるわけです。そういう国々は、今後どうしても、例えば自動車も増えるというようなことで、二酸化炭素の排出量は増えるだろうということで、ポルトガルにはプラス20%、20%増えることを認めましょう。それから、スウェーデンというのは、何年か前に国民投票をやって、2010年までに原子力発電所を全廃するということを国民投票で決めているわけです。そうすると、当然電力が不足しますから、原子力発電所を閉鎖したのの代わりに、例えば天然ガスの火力発電所をつくらざるを得ないわけです。したがって、そういう事情もあるから、スウェーデンはプラス5%を認めましょうということで、15の国それぞれはバラバラなんだけれども、全体として8%削減するということで、それを共同達成というわけであります。

 7つ目が排出権取引制度を導入するということ。これにつきましては、また後ほど簡単にご説明いたします。それから、8つ目が先進国間の共同実施を認める。これについても後ほど説明します。9つ目が、途上国との協力をクリーン開発メカニズムとして制度化する。以上のようなことが、京都議定書によって定められたわけであります。

 この地球温暖化問題というのは、これは科学、サイエンスが政治や経済を動かした、歴史上2番目の事例だというふうにいうことができるかと思うのです。じゃあ、1番目というのは何なのかといいますと、これはフロンガスによるオゾン層の破壊という事実を科学者が発見したこと。その発見に基づいて、モントリオールで会議が開かれて、モントリオール議定書というものが定まって、この議定書は、要するにフロンガスの全廃ということを決めたわけです。そして、先ほど申し上げましたような代替フロンと、つまり、オゾン層を破壊しないようなフロンの代わりのものというのが発明されたというか、発見されて、そしてそれが現在のエアコンディショナーとか、あるいは冷蔵庫に使われてるというわけです。しかし、その代替フロンもまた、オゾン層は破壊しないけれども、地球温暖化効果があるということで、これから使用を見合わさざるを得なくなるというのが目下の状況なんです。それで、ヨーロッパなんかに行きますと、すでに冷蔵庫やエアコンディショナーの冷媒には代替フロンはもうすでに使っておりません。代わりに炭化水素系の物質が使われているということであります。

 そして、今回のその京都議定書というのも、まさに科学者が大気中の二酸化炭素やメタンの濃度が上昇すれば、それによって地球が温暖化するという、そういうことをちゃんと裏付けて、そしてまたその将来を予測したわけです。そして、例えば2100年まで今の調子で二酸化炭素の排出を続けるとするならば、気温が平均して2度ほど上がって、海面が60センチぐらい上昇するであろうという、そういう警告を科学者が発したわけです。その警告を受けて、とうとう京都で、先進38カ国に対して、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの削減義務というものが課せられたわけであります。ですから、まさに科学が政治や経済を動かした2番目の事例なんです。おそらく3番目の事例となるであろうと思われるのが、環境ホルモンです。

 そういうことで、この京都議定書というのは、今申し上げましたような、大変歴史的な意義を持っているわけであります。そうだといたしますと、結局、この削減目標というのはどのようにして決めるべきかということなんですが、ですからもともと、2100年の大気中の二酸化炭素の濃度をいかほどにコントロールすれば温暖化を防ぐことができるのかということを、まず科学者が決めるべきことなんです。通常いわれておりますのは、実は、産業革命というのがございましたね。産業革命までは、大気中の二酸化炭素の濃度は280ppmで、ずっと一定だったんです。ですから、例えばものを燃やして、当然煮炊きをするのに木を燃やしたり、炭を燃やしたりはしたでしょうけれども、それで二酸化炭素が発生します。けれども、しかし、それはもう微々たるものにすぎなかったのです。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION