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講演

ポスト京都会議の地球温暖化対策

佐和 隆光


【司会】午後は、佐和隆光先生のご講演です。京都大学経済研究所所長、それから環境経済・政策学会会長です。ご専門は統計学、計量経済学でございます。それでは先生、お願いします。

【佐和】 ご紹介いただきました京都大学の佐和でございます。

 昨年12月1日から10日、11日にかけて、京都で、気候変動枠組み条約の第3回締約国会議、通称COP3というのが開催されました。今年の11月2日から13日にかけては、今度はアルゼンチンのブエノスアイレスで、COP4、4回目の会議が開催されることになっております。

 まず最初に京都議定書で何が決まったのかということを簡単に整理してみたいと思います。ひとつは、目標年次を2008年から2012年までの5年間とすると。もともと、2010年を目標年次にするということになっておったわけですが、例えばその2010年という1年だけを目標にしますと、たまたまその2010年が猛暑だったと。その結果、電力消費がものすごく増えて、二酸化炭素の排出が異常に増えるという可能性がありますね。ですから、いわば、この5年間の平均で考えましょうということなんです。

 それから、2つ目が、先進国全体で1990年比、少なくとも5%削減するということが決まりました。ここで申しました先進国というのは、いわゆる西側先進国といいますか、OECD24カ国、プラス旧ソ連、東ヨーロッパの市場経済移行国と呼ばれる国々が入ります。合わせて38カ国です。この38カ国が全体で1990年に比べて5%、次に申し上げる温室効果ガスを削減しようということが決まったわけであります。

 ただし、国によって適当な差異化を施しましょうということで、結果的には日本はマイナス6%、アメリカはマイナス7%、ヨーロッパ諸国はマイナス8%、ロシアはゼロ%、つまり1990年の水準を維持すればそれで十分であると。それから、オーストラリアはなぜかプラス8%ということで、8%増えることを許しましょうというわけです。

 それから、4つ目が、1990年以降の植林や再植林などによる吸収源を加算すると。これ、皆さま方ご承知の通り、炭酸同化作用というのがありまして、要するに、植物というのは空気中の二酸化炭素を固定化するわけです。そして、それで二酸化炭素を固定化することによってどんどん大きくなるわけです。そして、1990年以降の植林、再植林については、それを、例えばこの2008年から2012年の間にその木々の目方がどれだけ増えたかと、何トン増えたかということで、そしてそれをマイナスにするわけです。排出した量からマイナスしましようというわけです。

 それから、5つ目が、6つの温室効果ガスのそれぞれを二酸化炭素に換算して加え合わせたものを削減対象とするということが決まりました。その温室効果ガスというのは、二酸化炭素の他に、メタン、亜酸化窒素。HFC、PFCというのは、これはいずれも代替フロンと呼ばれるやつですね。現在エアコンディショナーとか、あるいは冷蔵庫の冷媒に使われている人工の化学物質であります。それから6フッ化硫黄というのは、よく電柱にトランスというのがあります。あのトランスの中に含まれている、これも化学物質であります。これをすべて二酸化炭素に換算した量を削減対象とする必要がある。

 

講師略歴と主要図書等

東京大学経済学部卒業、現在京都大学経済研究所長、環境経済・政策学会会長、経済学博士 専門統計学、計量経済学.
 (主要著書)「20世紀型経済システムの転換」「計量経済学の基礎」「数量経済分折の基礎」「虚構と現実」「高度成長正経済学における保守とリベラル」ほか多数.

 

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