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国が委任したわけでありますから、その元の責任、元の権限は国、国すなわちこれは各省庁であります。そこで、その指揮・監督の権限と責任は、国にあるわけです。ですから、知事さんは、仕事はやらされているんですけれども、最終的に何か問題が起こったり、新しいことが起こったりすると、これは各省庁にどうしたらいいんだと問い合わせをして、各省庁からの指示を仰ぐ。それに従って行政をやらなくちゃならないという制度にしてあったわけです。これが大体、知事さんの仕事の7、8割を占めていたわけです。ですから民選の知事になっても今までとあまり変わらないように、行政が中央集権でやれるようになっていたわけであります。

 私どもは、これはいくらなんでもおかしいのではないだろうかと。これだけは少なくとも直さなくてはいけないだろうと、この制度を撤廃することを考えました。なぜかといいますと、この機関委任事務制度の中から、機関委任事務でない、われわれは自治事務といっているんですけれども、都道府県が自分の裁量でやれるような事務に変える。このAという事務を、機関委任事務から自治事務に変えるというようなことを1件1件やっていたら、中央の省庁というのはもう本当につまらないものから、10件やりました、100件やりましたといって、肝心なことはもう変えないというふうになりかねないわけでありますから、制度そのものをなくしてしまうということを考えたわけです。

 ところが、制度をなくすと、今まで機関委任事務制度でやっていた仕事を、一体これからどういうふうな形でやるのかという問題が出てくるわけです。そこで、例えば国政選挙なんてありますよね。国の、例えば代議士の選挙。これは機関委任事務で、今まで自治体にやってもらっているわけです。これはしかし、当然本来は国の仕事です。自治省の仕事なわけです。しかし、これを全部自治省が自分でやるとなったら、これは大変な無駄が生じるわけだし、あるいは国民が大変不便なことになるのかもしれません。そこで、こういう種類のものは、本来国がやるべきなんだけれども、国民の便益とか、あるいは費用の縮減のために、自治体に委託をし、自治体はそれを受託をすると。そういう法定受託事務というジャンルを設けて、今まで機関委任事務でやってたものを、自治事務と法定受託事務に分けるという作業をしたわけであります。

 なんと561本の法律がありまして、この仕分けを全部やったわけです。法律は561本なんですが、一つの法律にまたいくつも事務が入ってるもんですから、1000ぐらいのものを分けたわけです。結果として、大体6、4ぐらいで、自治事務が6で、法定受託事務が4ぐらいになったんでしょうか。ちょっと法定受託事務が多いじゃないかというご批判もいただいているわけですが、トータルとして見ると、今まで七、八割が機関委任事務で、2、3割が自治事務であったものが、今度の仕分けによって7割ぐらいが自治事務になりまして、3割が法定受託事務になったということで、逆転したわけです。これはかなり大きな変化で、実際には、おそらく再来年頃から法律が改正になってだんだん、影響が出てくるんじゃないかと思いますが、そういう一つの改正をやりました。最初、これは各省庁、もう全く激しく抵抗していましたが、最後はだんだん折れ合って、なんとか収まったわけであります。

 そのほかに、権限委譲もやりました。これはなかなか、実は第4次勧告までの間では4、50件ぐらいしかできなかったと思います。都道府県と市町村への権限委譲。市町村の中でも、政令指定都市とか中核都市とか、いろいろ分けてやりましたんですけれども、あんまり大した数にはなっておりません。それで今、第5次勧告で、さらに権限委譲をやってくれというのを、前の橋本総理に頼まれてやっているんですが、これはやっぱりなかなか大変なんです。各省が非常に強い抵抗を示しておりまして、難航してるわけであります。少しはやりましたんですけれども、なかなか。

 それでまた一方、地方の自治体も、その権限委譲に関しては、必ずしもそんなに強い希望が出てこないんです。例えば農地転用とか、保安林の指定解除とか、そういうあたりで少し権限の委譲が出ております。そんなようなものがやっぱり何十件かは出ているわけですけれども、残念ながら、これはそう大した数にはなっておりません。

 それから、必置規制というのがあるんです。これは、例えば県は保健所を置かなくちゃいかんとか、いろんな施設とか組織とか、それからあるいは職員とか、そのまた職員の資格まで決めてくる。

 

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