そうしますと、一方で人口は倍になってくる。その人口増加を抑えるためにも、あるいは紛争を抑えるためにも、経済を発展させなきやならない。ということになりますと、そのために資源とかエネルギーとかいうものは、今の何倍、何十倍と必要になってきますし、また、そういう資源・エネルギーを使っての生産活動、あるいは消費というようなことによって、環境破壊も今の何倍、何十倍という規模になってくるわけでございます。現在でも相当な問題、地球的課題といわれるような問題になっているわけでございます。これを、このわずか四、五十年のうちに解決していかなくちゃならないということだと思うのです。
その中で、やはり、森林とか、要するに植物がC02を吸収してくれるこの大きな循環というものがだんだん細って、一方で人口がどんどん増えていくということは、バランス上大変大きな問題なんではないかという感じがするわけです。そういう意味で、片方で人口が増える中で、どうやってこの自然を守っていくのかというのは人類の非常に大きな課題だし、それができないとこのバランスが崩れてしまう。この大きな課題を解決できないでしまうということになるんだろうと思います。
ですから、新しい、公害のないエネルギーを開発するとか、新しい資源を開発するとか、あるいは徹底したリサイクルをやるとか、省資源型にもっていくのと同じようなウエイトで、今のこのナショナル・トラストのような運動、自然を守っていくという運動が、人類にとって極めて重要であるというふうに、私は感じるわけでございます。
そういう意味で、この運動がこれからますます発展していかれることを心から祈っておるわけでございます。そして、今はナショナル・トラストという形になっておられるようでございますけれども、私、ちょっとこれは素人考えで叱られるかもしれないのですが、日本でお金を集めて、日本のこの緑を保全をするためにお金を投ずるということも大変大事だと思うんですが、同じお金をブラジルとか南米とか、あるいはアジアあたりへ持っていったら、相当広大な森林を確保することがあるいはできるんじゃないかという、そういう意味で、ナショナル・トラストがやっぱり、いずれインターナショナル・トラストのような形になっていくということはどうなんだろうかなと。そんなことを、実は考えるわけでございますが、これはあるいはいろいろご批判を受ける点かもしれません。
それで、実は当会の創立以来の会長であられる原文兵衛先生、この方は、私の、旧制の浦和高等学校の大先輩でございまして、現在同窓会の会長をやっておられます。この先生から、前の官房副長官の石原信雄先生を通して、この大津へ来て分権の話をしろという、そういうご指示がございましたわけです。私は、このナショナル・トラストと分権というのをどういうふうに結び付けてお話したらいいのかなということで戸惑ったわけでございますけれども、自治体の方々も来てらっしゃるから、分権の話は興味がおありではないかというふうなことでございました。
そこで、その分権の話をするわけでございますが、ただ、分権の仕事をやっていて感じたんですが、この環境行政に関しては、自治体が先行して、国がそれをフォローしていくというようなのが大体基本的なパターンになってる感じがするんです。これはもちろん、全部の自治体が一斉に先行してということではなくて、むしろ一部の先進的な自治体が先行して条例をつくると。そして、国が少し時間を置いてからそれをフォローして法律にしていくと。そして、それが全国に広がっていく。こういうような形をとっているような感じがするんですね。
それで、ちょっと調べてみますと、そもそも戦後の公害行政のスタートというのが、昭和24年の東京都の工場公害防止条例の制定から始まるんだそうでございます。そして、これが昭和24年ですが、昭和29年には騒音防止の条例、30年には煤煙防止の条例というものが、東京都で次々に出されるというようなことのようでございます。そしてまた、神奈川県でも昭和26年に公害防止条例、大阪府でも29年に公害防止条例、福岡県でも30年に公害防止条例というふうな形で公害防止条例が大きな都府県で制定をされた。国の取り組みのほうは、昭和30年になって厚生省が生活環境汚染防止基準法案要綱というのを、ようやくつくりまして、これを各省に回すわけですが、各省が、これは駄目だ、時期尚早であるというようなことで反対をいたしまして潰れました。