講演
地方分権の推進
諸井虔
【司会】本日は、雨の中、台風の中、おいでくださいましてありがとうございます。
本日の第一番目は、諸井虔先生。地方分権推進委員会の委員長、太平洋セメント株式会社取締役相談役の諸井虔さんでございます。少しご紹介を申し上げますと、先生は東京大学のご卒業、それから、日本興業銀行にお入りになりました。おじさんの諸井貫一さま、秩父セメント社長さんに請われまして同社にお入りになりまして、興銀はご退社になりました。秩父セメントの社長、会長をご歴任、それから、経済同友会元副代表幹事をやっておられます。日経連の副会長も昨年までお務めになりました。その他、税制調査会の委員、経済審議会の委員をやっておられます。お父さんは作曲家、弟さんも作曲家という、非常に音楽に秀でたお方でございます。皆さん、新聞・雑誌等でもいろいろと先生のお話があるわけですけれども、先生と堀紘一さんとお書きになった『異才活用マネージメント』というのがおもしろいということでございます。
それでは、ただいまより「地方分権の推進」ということで、諸井先生にお伺いいたします。先生、お願いします。
【諸井】 ご紹介をいただきました太平洋セメントの諸井でございます。太平洋セメントというと、あんまり耳慣れないと思うんですけれども、これは、実は10月1日に日本セメントと秩父小野田が合併をいたしまして、できたてのほやほやの会社でございます。ひとつよろしくお願いいたします。
きょうは、ナショナル・トラストの会にお招きをいただいたわけでございます。私も、このナショナル・トラストについては、前にイギリスで始まって大変盛んになったというような話を聞いた覚えがありますし、また日本でも少しずつ広まっているというふうな話を聞いたことがございます。大変これは重要な運動ではないかなというふうに考えております。と申しますのは、今人類が抱えておりますたくさんの問題があるわけですけれども、東西の冷戦が解消しましたあと、例えば地域紛争というような問題があります。各地で、宗教紛争とか、いろんな地域紛争がたくさんあるわけですが、なかなか完全な解決に至らない。収まったと思うとまた再燃をする。そして、また次々と飛び火をするというような形で、今世界中に広まっておるわけでございます。
かつて東西対決のあった頃は、むしろ東西のリーダーであるアメリカとソ連がそういう地域紛争を一生懸命抑えるような形で、それぞれの陣営のほころびが出ないように一生懸命抑えるような形でやってまいりました。それが今はもうなくなってしまいましたから、この地域紛争が起こるとなかなか収まらないというようなことが起こっております。
それから、また一方では、人口爆発の問題があります。21世紀の半ばには人類が100億に達するという話になっておるわけでございます。いずれもこれは、人類の歴史の中で大変難しい問題なのではないかなという感じがいたします。これを解決するためには、結局は発展途上国の経済を成長させないといけない。やはりこの地域紛争の基には、貧困とか経済の格差とかいうようなものがあるんだろうと思います。それから人口の問題も結局は経済がある水準に達しますと人口増加というのは止まってくるわけでありますから、やはりこれも経済の問題になってくるんではないかと思うんです。
講師略歴
地方分権推進委員会委員長太平洋セメント
株式会社取締役相談役。
東京大学卒業後日本興業銀行を経て秩父セメント株式会社社長、会長を歴任。
経済同友会副代表幹事等。