単に知床だけではなくて天神崎でも柿田川でも、方々で展開されていることはやっぱり注目すべきことではないかと思います。
最後に、この運動の創成期に活躍された三人の方に思いを馳せてみましょう。まず第一に大佛次郎さん。鎌倉のトラスト運動について、これは「過去に対する未練や郷愁のためではなくて、将来の日本人の美意識と品位のため」にやったのだと言われました。この言葉はわが国のトラスト運動の根底にある思想を明示されたものといえましょう。第二に知床の藤谷 豊町長さんが「知床で夢を買いませんか」という独自の日本的なナショナル・トラストの思想を打ち立てられました。当時神奈川県の長州知事は、これは「小さな自治体の大きな実験」だと評価しておられましたが、まさにそうだと思います。それから和歌山県田辺市の天神崎の運動のリーダーであります外山八郎さん。自然保護というのは多くの人々が自然を守れと言って押し切っていくのではなくて、例えば天神崎の場合、開発業者に開発を止めさせるということで、開発業者に犠牲を迫る。一方、自然保護を訴える人たちも自分たちでお金を出し合って犠牲を分かち合う、ということで進むのが真の自然保護の運動ではないかということです。そこで運動の名前も「天神崎を大切にする会」と名付けられました。この3人の方々はいずれも故人になられましたが、私どもはこれからも初心に立ち返り、この方々の理念を大切にしながら運動を進めていきたいと思っております。
では最後に、時間が押し迫りましたが、スライドを急いでお見せしたいと思います。
これがイギリスのオークです。オークの葉はイギリスのナショナル・トラストのマークです。ミズナラの葉です。
これが創立にたずさわられた3人のポートレイトです。一番この右側の人がサー・ロバート・ハンターで、温厚で、しかし構想力の豊かな人した。真ん中がオクタビア・ヒル女史。ナイチンゲールと並び19世紀を代表するイギリスの婦人運動家の二人のうちの一人と言われています。それから向こうが牧師さんのキャノン・ローンスターです。
●支部が各地にあるわけです。その地図です。
●これが湖水地方の、例のピーターラビットの作者のベアトリクスポターの家です。ここは日本人がよく訪ねていきます。
●これも湖水地方です。イングランドには山は少ないんですが、この山と湖を詩人のワーズワースや、文芸評論家のラスキンとか、いろいろな人たちが愛でた地域です。
●これがカントリーハウスです。こうした歴史的建物を各地にたくさん保有しています。
●これがホンテンアベイといって、昔の修道院の廃墟です。これはイングランドの北の方にありまして、世界遺産に指定されています。
●こういうガーデンといいますか、庭を整備しています。150ほどこういうガーデンが保管されています。
●これはネプチューン計画で買い取った海岸線です。
●これもそうです。これはイングランドの南の方です。セブン・シスターズという白いチョークの、断崖が保存されています。
●これもそうですね。各地に600キロぐらいの自然海岸線を持っています。
●こういうふうにして海岸のところに自然歩道を作って、利用と保護を両立させているわけですね。
●こういう、畑、牧場、田園を広く保管しています。
●家族連れで、自転車で日曜日などプロパティーに訪ねてくるのです。
●こちらの側の人は定年でリタイヤした人ですね。こういう人たちがボランティアでトラストの資産の説明役をかって出ています。
●これは奥さん方が皆さんボランティアでこういう古い建物の中にあるいろいろな什器とかを掃除したり修理したりしていますね。
●これは野外で労働しているわけですね。資産修復のためにこういうかなりハードな仕事をやっています。ギフト・オブ・タイムといいますか、時間をナショナル・トラストにギフトするのです。実際にお金を払ったら大変な金になるんですが、それを皆さん無料で労力奉仕しています。文字通り、ボランティア活動です。
●これが100平方メートル運動の現場ですね。こういうところを買い戻して原始の自然に返そうとしているわけです。
●これがその5周年記念のシンポジウムで、これがきっかけになって全国的な運動が展開されました。