戦後二十年近くドイツの復興と成長を指導した人です。それから最近ではサッチャーさんがそうですね。エアハルトと同様に、政府をできるだけ小さくし、同時に強くしていきました。政府はできるだけスリムになるとともに、やるべきことはちゃんとやる、やっちゃいかんことは断固としてやらんという、そういう行政になっていくべきです。
さらにこの補完性の原理というのは、中央と地方との関係にも適応されるべきです。中央政府のやることは、地方自治体でやれないこと、原則としてそれだけに限定されるべきです。だから補完性の原理というのは行政と民間、行政でも中央と地方との間、これを律すべき共通の基準だと言っていいと思うんですね。
これらは日本でもっと真剣に自覚されていいと思うんですよね。これは結局、社会がどう変わっていこうとしているのかということの明確な自覚から帰結されてくることです。それがはっきり知られなければ、こういう原則も出てきませんよね。
県民運動の新しい展開
兵庫県では少なくともこれらが自覚されております。その兵庫県の最近の県民運動の新しい展開に関連して、今日はさらに二つほど挙げておきましょう。
兵庫県には、私もそのメンバーの一人ですけど、県民運動研究会というものがありますが、ここでもそうした角度から討議や研究報告が進められてきました。そして今度、これはどの県もやっているはずなんですが、NPO法の成立に伴う施行条例の作成、その原案作成にも関与することになりました。兵庫県は9月、我々も関係して作ったんですが、単にNPO法の実施というのでは芸がないですから、この際にもっと大きい理念をうたって、その線上で実施の方向を決めようじゃないかということになり、その条例の名称も、こうなりました。「県民ボランタリー活動の促進等に関する条例」です。県民のボランタリー活動を一般的に促進する、その条例を定め、その中に今度のNPO法の実施条項というものも盛り込むということにしてあるんですね。これは、先のような考え方の上に立っているからです。
そしてさらに、県民運動の場合にも、どうしてもリーダーが必要ですね。ただ何となく集まってやりましょうというだけではなかなかうまくいかんでしょう。長続きもしないでしょう。リーダーがどうしても必要で、その人材の養成に、これももう10年来力を入れてきているんです。各分野の指導者、リーダーの養成ということを各部局でやってきましたけれども、3年前、そういうものを総合したような本格的なリーダー養成というのをやろうということで、「兵庫ふるさと創生塾」という塾を作りました。大体一クラス四、五十人、年齢も性別も問わずボランタリーな社会活動のそういうリーダーになろうという志を持った人を集めまして、2年間、いろいろな訓練をやったり勉強をしたりします。創生塾と言っているんですが。そして2年の諸教科を終わりますと、ドイツ語を使いまして(笑)「ふるさと創生マイスター」という資格あるいは称号を与えることにしました。今年の4月に第1期生が出ました。今2期、3期が勉強をやっております。これをずっと続けていくという方向になってきています。
これらは兵庫県は現にやっていることですけれども、そのやっていることの背景にはどういう考え方があるのかということも申し上げました。繰り返しまずけれども、21世紀は三元の秩序になるんですね。基本的に三つのセクターあるいは三つの原理から構成される社会になるはずです。あれかこれかじゃないです。自由主義は専ら市場セクターだったんですね。共産主義は専ら公共セクターだったでしょう。そのどれもつぶれたんですね。そしてそれら二つのセクターが共に不可欠であることが、はっきりしてきました。それにもう一つ、第3の中間の社会的セクターというのが組み込まれていく。新しい世紀が、そこで、三元の秩序の時代になることはまず間違いないです。その上に立って、いろいろなボランタリーな活動が進められることになりますと、日々やっている活動は世の中の片隅のほんのささやかなものだとしましても、新しい時代を拓いていく活動だということになるんです。新しい世紀を拓いていく活動だということになります。私もそういうつもりでやっております。(笑)ありがとうございました。(拍手)