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日本の人口の半分もありませんよね。それで180万。そして毎年5,000団体増えているということでした。広義のNPOの急増とその社会的な役割の増大は、最近の新しい動向です。今日の先進諸国では、そうしたボランタリーな活動領域がもう一つの新しいセクターを形成してきています。ご承知と思いますが、これはヨーロッパのEUの中では社会的セクターと言われています。もともとはこれはフランスで使われてきた用語法です。セクトゥール・ソシアールです。つまりソーシャル・セクターです。しかしイギリスでは一般にはボランタリー・セクターと言うんですね。呼び名はまだ定まってはいませんけれども。いずれにしろ、広い意味のNPOが主な担い手となって、非営利的な活動が展開され、新しい社会部門が形成されてきているわけです。

 そして本来は市場部門を担う企業も、ご承知のように、最近はフィランソロピーのような形でいろいろな非営利活動をやります。労働組合もボランティア活動を広く展開していることもご承知の通りであります。そういう非営利的な活動のセクターが、非常に大きくなっているということです。これは最近の注目すべき動きで、21世紀の社会はこれがもう一つの社会セクターを作る時代になっていくはずです。これは間違いないと思います。 そうなると、記述のところからして、社会の全体は三つの層から成り立つものになっていきます。一番基層というか一番下の層に市場セクターがあるんです。これを担っている担い手は主として企業、個人です。ここで求められるのは自由競争と効率ということです。次に、個人とか個々のものではできないことがある場合には、お互いに助け合っていきましょうというのが第2のセクター。先ほど社会的セクターと言いました。これを担っているのは主として広い意味のNPOです。ここで支配するところの原理は何かというと、友愛とか連帯というものです。そして、それでもどうしてもできない時に行政が出ていくという形になる。だから、行政が担い手であるところの公共的セクターがその上に重なることになります。ここで支配すべき価値規範というのは、これは平等や公正というものです。そういう形で3層に社会が成り立つ。これは21世紀の社会の姿だと思います。先進社会の。まず間違いないと思います。時代はこういう方向に進んでいる。兵庫県ではこのことが自覚されています。そしてその線上において、ボランタリーな県民運動を展開しようとすることをやっております。

 ところで、以上のようだとすると、行政のやる仕事というのは、民間ではどうしてもできないことにかかわってくることになります。民間ではどうしてもできないこと、原則としてはそれだけに限られるべきです。従って行政がやるべき仕事は保障ではないんです。補完です。民間ではできないことを補完することにあります。平等・公正の原則から補完していく、これが行政の活動を律すべき基準だと言っていいと思います。実際にも、例えば今日のEU、西ヨーロッパのEUとその加盟諸国におきましては、「補完性原理」というのが社会の再編成の基本原則とされています。補完。よろしいですね。サブシディアリティー・プリンシプル。サブシディアリティーという言葉です。ドイツ語ではズブシディアリテート・プリンテープと言いますね。補完性の原理。これが行政と民間のあり方を規定していく原則です。

 権利を主張し保障ばっかりを要求してきたから、行政はますます大きくなったんです。自分らでできることは自分らでやる、どうしてもできないところだけを行政がやる、ということになれば、行政の仕事はもっともっと小さくなるはずです。そして税金も少なくてすむんです。今上程されている行政改革なんかをやる場合も、一番中心の理念にされるべきですよね。行政の哲学になるべきです。他方、今日は、環境問題一つとっても明らかなように、やるべきことはちゃんとやる、やってはいけないことはどんな要求があってもやらない、という強い政府も同時に要求されているんです。だから私は、これからの政府は「小さくて強い政府」でなければならない、と言っています。今の政府はむしろ逆です。「大きくて弱い政府」です。あっちから要求があったらあっちに行き、こっちから要求があればこっちに行って、そのたびに仕事は増えるばかりです。財政の破綻した今は、要求されるのは「小さくて強い政府」の確立だと思います。

 これは、しかし、世論で動く民主主義の原則と実は両立が難しいんですよね。だから一にかかって政治家の問題になってくると思うんですね。この方向を自覚的に実践した有名な政治家に、ドイツではエアハルトという人がいました。

 

 

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