日本財団 図書館


神戸市では「触れ合い拠点」と言っておりますし、兵庫県では「地域安心拠点」と言っております。要するにコミュニティーです。小学校単位ぐらいのコミュニティーを何とか作っていこうという運動です。今その運動を盛んにやっているところです。つまり、我々が忘れていたもの、あるいはかつて我々の世界にもあったんですけれども、捨てていったもの。それがどんなに大切であるかということを震災は教えてくれたということですね。 こういうところがら、かねて推進してきた県民運動が一段と本格的になってきました。その基本的な方向と内容は、コミュニティーづくりにあります。こうなってきました。そしてボランタリーな活動、ボランタリーなセクターというものを、本格的に作り上げていこうという意識を持って、今進んでいるわけです。

 

21世紀は三元の社会秩序へ

 実は初めに申し上げましたように、この傾向は今日の先進国の基本傾向、一般の動きであると言ってよろしいんです。この点を少しまず見てみましょう。2番目の問題に入ります。「21世紀の社会体制の方位」です。先に見ましたように社会の仕組み、社会の体制そのものが、日本は今や第3番目の維新を迎えて新しい方向を見いだしていかなきゃならない時に来ている。この時に、今、先進諸国はどういう動きを示し始めているかということを、しっかり把握しなくてはならないと思うんですね。

 もう20世紀もあと2年です。20世紀というのは一体どういう時代であったかということを、概括できる状況に我々は今日あります。もう今から20年ぐらい前、1970年代の終わり頃のことです。ドイツの非常に有名な経済学者にアルフレッド・ミラー・アルマックという人がおりますが、この人が、20世紀はどんな世紀だったかという論文を書いているんですね。そして彼は、20世紀というのはいろいろな秩序、社会秩序が実験された時代だと言っているんです。あるいは自由主義、あるいは社会主義、あるいは共産主義という、こういういろいろな社会秩序が実験された時代、「諸秩序実験の世紀」と言っております。「ヤール フンデルト・デア・オルドヌングス・イクスペリメンテ」という言葉を使っているんですね。さまざまな社会秩序が実験された、そういう時代だと言っている。それから二十数年たっているんです。今はその実験の結果も出ていると思うんですね。実験の結果も出てきている。これが、今日、20世紀という世紀の終末の状況だと思います。

 この面で最近の一番大きな事件は、何よりもあの共産体制が音をたてて崩れたことでしょう。20世紀の最大の社会ドラマであったと思います。ソ連という国は、ご承知の通り1917年にできたわけです。そして第二次大戦後、実に世界を二分する勢力に拡大したんです。しかし80年代から急激に傾いて、ついに1991年の暮れにソ連という国は消えてしまいました。ものすごく大きいドラマですよね。

 確かに中国はまだ、マルクス・レーニン主義という共産主義を掲げています。なるほど中国は、政治の面では確かに共産党一党独裁を今でも続けていますけど、経済の面では、ソ連よりもずっと早くから共産体制を捨てているわけですね。1979年の始めからです。79年以降、捨ててきたわけです。そして1993年には憲法を改正しまして、はっきり中国のこれからの方向というのは「社会主義市場経済」であると言っているんです。社会主義というのは修飾ですよね。市場経済でやるんだというふうに言っております。その意味において中国も、共産体制がつぶれたと言わなくてはなりません。だから、21世紀というのは市場あるいは市場経済が基礎になる社会になることは間違いないです。再び共産体制ができることはあり得ません。市場経済に基礎をおく体制になることは間違いありません。つまり市場セクターというものが、社会の一番基礎をなすことは間違いないです。

 ところがあのソ連がつぶれる1991年、その年の1月に例の湾岸戦争がありました。あの湾岸戦争はソ連が消えていく、ソ連がなくなっていく決定的な一つの事件でしたが、当時アメリカの大統領でしたブッシュさんは自由主義の勝利ということをうたい上げたんです。これはしかし間違いです。自由主義が勝利したとか資本主義が勝利したと、いまだに一流新聞の社説にも載ります。しかしこれは嘘です。自由主義とか自由資本主義というのはとうの昔につぶれております。いつつぶれたか。1930年代の大恐慌の時です。自由主義国家と言われてきた国々の現実を見てください。

 

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION