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今第3の維新のなかに我々はいると言っていいでしょう。だから今日の問題というのは単に景気動向の問題にとどまるものではありません。それももちろんありますが、それだけじゃない。さらに一頃リストラクチャリング、つまり構造改革が言われたが、今日の問題は構造の問題にとどまるものでもないんです。さらに深くそれを支えている体制そのものが、今問題になっているんですね。だからこれをはっきり把握しない限り未来はないと私は思います。

 それで、体制はどう動いているのか。あるいは動こうとしておるのか。これは今日私が話そうと思っている主題に直接関係があるんで、後ほどより詳しく申し上げようと思います。つまり、結論を先に申しますと、ボランタリーな活動の領域、これをボランタリーセクターと言いますけど、これが最近急激に拡大していることですね。おそらく21世紀の社会体制はそういうものをもう一つのセクターとして組み込むものになる、このことはまず間違いありません。後ほどこれはやや詳しく申してみたいと思います。私は神戸に住んでいるんですけど、そういう線上で兵庫県がやってきた取り組み、あるいは今どういう自覚を持ってそれを進めようとしておるかをご紹介申し上げたいと思っています。

 

兵庫県のボランタリーな県民運動

 兵庫県は「県民運動」という言葉をよく使っております。県民のボランタリーな活動なんですけれども。

これはもう以前からあります。以前は大体、生活運動でした。私、今関係している生協とも非常に関係があるわけですね。神戸はご承知の通り「コープこうべ」という、世界で一番大きい生協があります。組合員130万です。こうした生協のほか、神戸ではもともと消費者運動とか婦人運動とかというのが盛んです。こういうこととも関係がありまして、生活運動ではあったけれども県民運動というのはずっと以前からあるんです。

 けれども、現在の県民運動はもっと包括的です。これに最初の段階を与えたのは、ちょうど今選挙中で申し訳ないんですが、(笑)現知事です。貝原さんになってからです。この方が最初知事になったのは昭和62年、1987年のことでした。貝原さんが立ちますと、すぐ県民運動をその旗印に立てたわけです。単に立てただけじゃなくて、体系的な展開をしょうとなさいました。何よりも、その時から挙げられてきたスローガンを申せば、すぐおわかりいただけると思うんです。こういうスローガンです。まず「心豊かな人づくり」そして「すこやかな社会づくり」、「さわやかな県土づくり」です。つまり人間と社会と自然というもの、こういう軸をはっきりさせながら県民みずからの運動を展開していこう、こういう方向で進んできたわけです。

 1987年といいますと、ご記憶もございますでしょう。日本は戦後の非常に高度の経済成長のおかげで、我々の生活が物の満ちあふれる生活になりました。こうして「飽食の時代」とか「飽和経済」とかいう言葉が言われ始めるのが1980年前後です。それから4、5年たちますと、80年代中頃ですね、何が言われたか思い起こしていただきたい。「真の豊かさ」ということが問われ始めた。本当の豊かさとは何かということが問われ始めた。確かに生活はよくなったです。物質的には。しかしこれで本当に豊かなんだろうかという疑問が、日本の国民の中で生じてきたということは非常に重大なことです。その時期に兵庫県の先ほどの包括的な県民運動が始まったんです。だから最初に「心豊かな人づくり」ということから始まっていくんですね。そして「すこやかな社会づくり」、「さわやかな県土づくり」ということが掲げられたのです。これにはそういう時代背景もあったのです。

 それからずっと努力が重ねられて、昨年がちょうど10年だったわけです。去年が1997年でしたら、10年でございました。このlO年の間にボランタリーな県民運動の組織や団体が3500ほどできております。先ほど言ったいろいろな分野のものがあるんですけどね。

 そして重要な出来事として、その間に例の大震災がありました。1995年1月17日の未明のことでした。私も神戸に住んでおりますから被災者の一人ですが、大変なものだったことは皆さんもご記憶の通りです。あの震災はいろいろなことを教えてくれました。まず近代的な都市がどんなに弱いものかということがはっきりしました。これは単にハードの面だけではありません。ソフトの面で非常に弱いです。近代都市というものは。このことを身にしみて感じました。

 一つの例を挙げます。

 

 

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