政府も赤字ですが、地方自治体もほとんど赤字です。この行政関係の赤字というのは原則としてほとんど全ては税金でまかなわれるんですが、その赤字の総計はいくらになっているか。520兆円を超えているんです。去年のGDP、国内総生産です、1年間で作ったものの総額はいくらかというと、508兆円です。1年間汗水流して作ったものの総計よりもはるかに大きい額というのが、今、公的な赤字です。これは財政がもう破綻しているということです。これはほとんど最近言われない。とにかく金を使え、金を使えということばっかりが先行しているものですからあまり言われませんが、決定的に重要なもう一つの点です。
以上、二つの点は我々は真剣に見ておかなければいけませんね。金融の破綻といううものと財政の破綻です。
これは何を意味するかというと、戦後の体制がすっかり崩れ去ったということです。ご承知のように戦後の日本、あの廃虚の中から立ち上がって世界に例のない高度成長を遂げたんです。これは間違いないです。その場合の経済の体制はどうだったかというと、よく言われるように護送船団方式でしたね。戦争に負けたけれど高い教育水準と技術水準は残りましたから、それを基礎にしまして先端の産業を日本に導入して、これを助成していく。それを助成するために何を使うかというと、結局は財政と金融ですよね。だから金融に非常に政府の力が入って、これまでは金融関係は安泰でした。つまり、かつて戦争中に物資や資材や人間を南に運ぶ場合に、輸送船の周囲を海軍の艦船が取り巻いて護衛して行きました。これを護送船団と言ったんですけども、戦後の日本の経済の体制というのはそういうものでした。財政、金融によって守られて産業が発展していく、そういうやり方をとったわけです。ところが今や、それを守っておった護送船団の二つの主力護衛艦がともに沈んだんです。これはもう戦後のあり方が、体制がすっかり崩れたということを意味します。
これを支持していた政治はどうであるかというと、ちょうど経済のそういう体制ができてくる1955年前後に、戦後の政治体制もできてきます。ご年輩の人はご記憶と思いますが、「もはや戦後でない」という有名なキャッチフレーズのついた経済白書が出たのは1956年ですね。あの頃に大体先ほど言った護送船団方式というのが形を整えたと言っていい。戦争が終わって10年です。政治もそうでした。これもご年輩の人はご存じのはずですが、1955年の10月に革新諸派というものがまとまって日本社会党というのができたわけです。それで11月になりますとこれに対抗して保守派がまとまりました。これが自民党です。そして衆議院の議席が自民党が社会党の約2倍ぐらいの議席を持っておって、これがずーっと維持されてきたわけですね。これが護送船団方式を推進していく政治の体制でした。これも崩れ去ったんでしょう。これは1993年、細川内閣ができて細川内閣がつぶしたんですよね。それから政治は混乱を極めているんでしょう。政治体制はもうすっかり崩れた。その自民党支配の体制が崩れちゃったわけです。そして今や経済の体制もすっかり崩れた。
さらに、かつて戦後体制を支えておったのは日米関係でした。日本とアメリカはきわめて緊密な関係にあったんです。つまりお隣に中国、北の方ではソ連という共産圏があって、日本はいうならばこれに対する前線基地だったのですよね、アメリカにとっては。そういう地政学的な関係から日米間は非常に密接な関係にあったわけです。そして、米国寄りの自民党、それが一貫して政権を握り、これらに支えられて先ほど申しました護送船団方式が非常にうまく機能したんです。ところが日米関係も、共産圏がああいうふうに崩れ去ってからはすっかり変わってきました。ジャパン・バッシングと言いましたね。「日本叩き」と言ったんです。しかし中国が経済的にだんだんだんだん伸びてきますと、これにアメリカはもう日本を飛び越して直結しようとする動きを示してきた。これをジャパン・パッシングと言います。パッシングですね。バッシングでなくてパッシングです。近頃はジャパン・ナッシングと言っているんだそうです。ナッシングです。日米関係最悪の状況です。これらもまた戦後の日本の体制が崩れ去ったということを意味するわけですね。
私はもう数年前から第3の維新ということを言っております。明治維新、これを通常維新と言っていますが、第二次世界大戦後、アメリカによる敗戦国日本の大改造が行われました。これは第2の維新と言っていいでしょう。その大改造されてできてきた体制が今すっかり崩れたんですから、