講演
21世紀とボランタリー活動―兵庫県の取り組み
野尻武敏
講師略歴と主要著書
神戸経済大学(現・神戸大学)卒業、神戸大学教授、経済学部長を経て、(財)兵庫県長寿社会研究機構理事長、大阪学院大賞経済学部教授、神戸大学名誉教授、生活協同組合コープこうべ協同学苑長。
「選択の時代」「入間社会の基礎」 訳書/A・ウッツ「第三の道の哲学―新自由主義と新マルクス主義の間」ほか多数。
【司会】 引き続き野尻武敏先生をご紹介いたします。先生は、財団法人兵庫県長寿社会研究機構理事長、兼長寿社会研究所長さんで、現在は大阪学院大学経済学部の先生をしておられます。生活協同組合、コープ神戸協同学園長でもおられ、経済社会学会会長さんでもございます。
【野尻】今ご紹介いただきました野尻でございます。経済学が元々専攻でして、今日の主題である環境の問題とは直接関係ございません。ただ、環境保全のためのボランタリーな活動がたくさんございますけれども、そういう角度から時代の動きを見て、我々がやっている仕事というものの位置づけをしてみたいと思います。そして兵庫県の事例というのをご紹介しようと、こう思っているわけです。
今日の不況は第三の維新の兆
経済という面から見ますと、最近の日本は大変ですね。特にこの1年あまり、昨年から大変な状況です。1997年度、今年の3月で終わっておりますが、ほとんどの経済指標が戦後最低の記録を示しているわけです。一昨年の暮れから昨年の始め頃に関して政府は、1997年度の成長率は1・9%ぐらいだと言っておりました。かなり厳しい見方を毎年やっている野村総研でも、大体1%ぐらいの成長と言っていたのです。実際はどうなったか。マイナスO.7%で、戦後最低ですよね。その他の指標もみんな、戦後初めての落込みとか戦後最低となっています。惨憺たる状況です。
こうした不況問題が今日の主題ではもちろんございませんけれども、なぜそんなことになったのかという大きな原因の一つに、今日の問題と関係あるものがあります。これは皆さんご承知の通りです。バブルが崩れて以来、予想はされていたんですけれども、これほどひどいとはと、実際の数字を示されて多くの人が驚いたのが、金融の破綻でした。バブルが消えた後、焦げつき、ないしは焦げつきの危険のあるもの、政府は大体10兆円から20兆円前後というふうに言っておったんですよね。去年の秋になりまして出したのは、実に76兆7000億円余り、ほぼ77兆円。というと、政府の1年間の予算の総額にほぼ等しいです。これだけの焦げつきないし、焦げつきの危険があるのです。ところが今年の夏前にまた10兆円追加されました。87兆円を超えるようです。100兆円ぐらいあるんじゃないかと勘ぐる向きもあります。
それで、これに対する対策というのは遅れれば遅れるほど、これは傷が大きくなるんですね。特に利子のかさむ金融関係というのは。ところがそれへの対策となりますと、政治の状況を見てください。少しも一致するところがないんです。かえって今日の混乱を政争の道具に使っているという、こういう状況さえ多いんじゃないですかね。政治に関しては。このままでは本当に危ない感じがします。ただ最近は、緊急なことだから大いに金を使えという点では一致してきています。税金を使って対応する、何十兆円も使うというんです。しかし財政そのものもすっかり破綻しているんです。このことはほとんど最近言われませんけど、重要なことですよね。例えば97年度末、今年の3月です。どんな状態になっておったか。