そこで彼が考えたのが、蒸気機関というのはそれから100年も前からもう既にあっていろいろ使われているわけなんですが、なぜこの蒸気機関はとにかく効率が悪いのか。山の木を100本切っても、そのうちでエネルギーとして使えるのは1本だけだと。1%以下だと。この左の方がそうなんですが。何とかしてこれはよくならんでしょうかというわけで、その熱の大家のところへ行きました。二人が気が合いまして、一緒に考えようと、作ろうということでやりまして、そこで、細かいことは省略しますが、いっぺんに効率が3倍、5倍というように、熱効率が1%から3%、5%、やがてそれは20%というようになりました。ここが、先ほどお話のありました、原先生のお話のあったナショナル・トラスト運動が起こる産業革命の原動力なんです。ここで鉄と石炭の時代に突入するわけです。イギリスはその最先端を走るわけです。
●これはマンチェスターのリバプール。マンチェスターで最初にできた、世界で最初の汽車ぽっぽ。パフィン・リリート。今は大事に残されていますが、最初に走った。こうして新しい時代が生まれてまいりました。熱効率、これが5倍になるということはもう大変なことでした。
●世の中が変わってまいりまして。ここで天然ということと人工ということの意味が新しい時代を迎えました。
●どんどん、どんどん産業革命があって1900年、いよいよこれから20世紀に入るという頃には、万国博覧会が全盛時代。これはたまたま1900年のパリの万博ですが、向こうに、その前の博覧会の時に建てたエッフェル塔も見えております。とにかく人工、これが天然をはるかに凌駕して、新しい、素晴らしい将来が開けるんだと。それは科学技術の時代だというわけで、もう山の木が全部なくなって次は石炭だと。石炭を掘ってどんどんどんどん新しい工場ができる。もう水車で、川の側でものを作らなくてもいいんだと。鉄道が縦横無尽に走る。都会ができる。社会が変化する。
●そうしますと、力ということの象徴、これが覇権。
●その頃のヨーロッパはもう好き勝手なことをやる。これがちょうど20世紀が始まってしばらくした時のアフリカですが、ここに色がついているのは全部どこかヨーロッパの国が食いちぎった色です。ブリティッシュ、フレンチ、イタリアン、ジャーマン、ポルトガル、ベルジェン、スパニッシュと、インデペンデントで残っている白いところというのはもう本当に探さないと見つからない。完全にヨーロッパが覇権で植民地にしてしまった。
●これは東南アジア。東南アジアもほとんど独立して主権を持っている国はなくなった。インドネシアもマレーシアも、インドもビルマも、フィリピンもニューギニアも、もう全部ヨーロッパの列強が押さえてしまった。
●進歩だ、進歩だと、開発だ、開発だ。全く独りよがりのやり方で、単に国を壊すだけじゃなしに自然を破壊するという思い上がりが、この時代から始まった。その時にこのチャールズ・ダーウィンが「進化論」というのを持ち出した。これは自然界でのいろいろな観察に基づき、彼が進化の原因として、あるいはそのプロセスとして弱肉強食、生存競争という考えを入れたのを、それを列強の覇権に思い上がった連中は、それを人間の中でも正当化されるというように考えた。強い者は弱い者を食べてより強くなれはいいんだと。
●このダーウィンが『進化論』を出したのは、この覇権主義、植民地主義の最高の成果を上げた時ですが、ちょうどそういうオオカミの牙の下へ日本はやっとその時に鎖国を解いて国を開きました。安政の開国です。
●ですから、チャールズ・ダーウィンの説を数年後に今度はマルクスが『資本論』を書くきっかけにした、非常に刺激を受けて書いたと、彼は書いております。1867年。この第1巻が出たのが、日本で大政奉還、明治維新になる時。
●ですから日本が文明開化、ご維新だと言っているその世界は、今言ったような状態でした。
●日本にもまもなく鉄道が走るようになりました。
●全てが文明開化、人工の華。そういう中で、新しい時代というものについての識者、新しい見識もずいぶん立派なことがあった。例えばこの近くですと琵琶湖疎水。これは天然と人工と、いかにうまくするかということでずいぶん苦労していると思う。あれが水の面とあるいは水のレベル、