日本財団 図書館


講演

 

自然と人間の新しい時代へ

西島安則

 

講師略歴

京都市立芸術大学学長、日本クストー・ソサエティ会長、日本WH0協会会長、元京都大学総長。 日本学術会議副会長 工学博士。専門 高分子化学。

 

 【司会】それでは西島安則先生のご紹介をさせていただきます。先生は、京都市立芸術大学学長、それから日本クストー・ソサエティ会長。クストーとはフランスの海洋学者、そのソサエティーの日本の会長さんということでございます。それから日本WHO協会会長。それから京都大学の総長をしておられました。その他日本ユネスコ国内委員会委員長、日本化学会会長、日本学術会議副会長。先生は京都大学のご卒業。フルブライト留学生で米国に留学されました。工学博士、蛍光法による高分子の分子運動研究の第一人者と承っております。京都大学の名誉教授。演題は「自然と人間の新しい時代へ」ということでございます。

 【西島】ただ今ご紹介いただきました西島安則でございます。木原先生とクストーの会でいつもご一緒させていただいているんですが、先日このナショナル・トラストの講座に来るようにお誘いをいただきまして、今日寄せてもらって、先ほどは原先生からイギリスの産業革命のすぐ後、このナショナル・トラスト運動が生まれたお話を伺って、また、今吉良先生から私にとっても子供の時から非常に親しみ深いこの琵琶湖の変化と、自然との共生というのをもっと広い意味でお話しいただきました。次は私の番ということで、この琵琶湖に、この場所で、「自然と人間の新しい時代へ」という題でお話をさせていただくことにいたしました。

 この琵琶湖は日本の自然の代表、日本を象徴する自然美の代表だと言うことができると思いますが、ずいぶん研究が進んでおりまして、琵琶湖が生まれたのは500万年ぐらい前だと言われております。場所はここじゃございませんで、もう少し南の伊賀盆地のあたりに誕生したようでございます。だんだんこの辺が隆起してきて、伊賀の盆地からこの近江へ次第に湖が動いてきて、そして比良山のふもとで止まって琵琶湖になったというのが300万年ぐらい前だと。ちょうど人類が誕生して、いわゆる人間の文化といいますか、そういうものがそろそろこれから始まろうという頃に、この場所にできたようなんですが、その頃、ご存じのように急に地球が寒くなりました。平均気温が20度ぐらいであったのが10度ぐらいに落ちてくると、これはもう水が全部極地の方の大きな氷になり、また多くの地球の部分が氷河に覆われるということになりました。そうしますと、今度は水がなくなってみんな氷になってしまうわけですから、先ほど吉良先生の水の循環のお話がございましたが、この琵琶湖も一時浅く、水が枯れてしまって干潟のようになって、70万年ぐらい前に再び深い湖に戻りました。

 えらい、見てきたようなことを申しますが、実はこれは琵琶湖の底を1400メートルぐらいずーっと掘ってボーリングをして、そこからコアと言いますが、土、岩、泥なんかの固まって石になった、それを1400メートル引き上げて、それを丁寧に分析していくと、こういうことが全部わかるようでございます。この分析というのは大変で、その中にいくつか火山灰が多い時期があると、その火山はどこの火山でどこの灰が来たのかというのは、年代も場所も、その時の気候も、そんなものが一つの目印になるわけです。他にはそのコアの中に小さな花粉、それから種あるいは小さな微生物の化石、いろいろなものを分析しています。私も見せてもらっておったんですが 京都大学の理学部の堀江正治先生のグループがやっておられます。

 

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION