講演
自然と人間の共生−湖の環境の例から
吉良 竜夫
講師略歴と主要著書
前滋賀立琵琶湖研究所長、国際湖沼環境委員会初代委員長、日本熱帯生態学会初代会長など。
京都帝国大学農学部卒業、理学博士。
「生態学からみた自然」「熱帯林の生態」「地球環境のなかの琵琶湖」ほか多数。
【司会】 さあ、それではこれから講座が始まります。吉良竜夫先生に「自然と人間共生−湖と環境の例から」ということで、お話しいただきます。
吉良先生を滋賀県の方は皆さんご存じで、たくさんの人がお話を聞かれたご経験をおもちのことと思います。吉良先生は現在滋賀県の顧問をしておられます。その少し前まで滋賀県琵琶湖研究所が昭和57年オープンして以来ずっと所長さんをやっておられました。その間に、昭和59年に、琵琶湖で世界湖沼会議が開催されました。その時には実行委員長をおやりになっていただいています。それから昭和61年に、環境破壊や水質汚濁から湖沼を守るために設立されました国際湖沼環境委員会、ILECの初代の委員長をやっておられます。先生は京都帝国大学のご卒業でございます。理学博士、大阪市立大学の名誉教授、それから元日本生態学会会長、前日本熱帯生態学会長等もお務めになっておられます。勲二等瑞宝章を授章されておられます。それでは吉良先生、お願いいたします。(拍手)
【吉良】ご紹介をどうもありがとうございました。吉良でございます。今日は、表題に掲げましたように、「共生」という言葉に少しこだわってお話をさせていただきたいと思います。
「共生」、特に「自然との共生」という言葉が大変流行しておりまして、環境庁か作った環境基本計画の四つのキャッチフレーズ、四つの柱の筆順に「自然との共生」か出てまいります。この言葉は一般に広く受け入れられていると思いますが、ただ、なぜ「共存」ではなくて「共生」という言葉をわざわざ使うのかについては、あまりはっきりした共通の理解はないように思います。
なぜΓ共生」というのかについては、もっと考えてみなければならない。言葉だけが一人歩きしていて、その内容については、皆さんがめいめいまちまちの考えを持っていらっしゃる。従って、総論としては自然との共生ということで皆さん賛成なんですが、各論としてこの問題をどうしようかということになると、なかなか意見が一致しないのであります。これは私の個人的な感想なんですが、善意で自然保護にかかわっておられる方々の努力の中にも、必ずしも自然との共生という原則とは一致しないんじゃないかと思うようなこともあります。そのあたりのことを少しお話して、終わりのほうでは琵琶湖周辺で見られるいくつかの事例を取り上げて具体的な裏づけをしてみたいと思います。
生物学でいう共生
まず「共生」という言葉なんですけれども、仏教の言葉としてはかなり古くからあったと指摘しておられる方もあります。しかし、一般には、たぶん明治になって西欧の生物学か日本に入ってきたとき、「シンビオーシス」という生物学の用語を「共生」と訳したのか、現在使われている言葉の始まりだろうと思います。
私などが大昔に中学校の博物学で教わった時には、2種類の生物がずっと一緒に生活していて、