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学校における環境教育について

山極 隆  富山大学教育学部教授

(1)環境教育のねらい
 環境教育のねらいは、環境や環境問題に関心・知識を持ち、人間活動と環境とのかかわりについての総合的な理解と認識の上に立って、環境の保全に配慮した望ましい働き掛けのできる技能や思考力、判断力を身に付け、よりよい環境の創造活動に主体的に参加し、環境への責任ある行動がとれる態度を育成することである。
 この事からも分かるように、環境教育のねらいは、単に知識・理解だけでなく、科学的思考、総合的な判断、主体的な参加、実践的な行動など総合的な要素からなる。

(2)環境教育の現状
 環境教育については、従来からその重要性に鑑み、小学校、中学校及び高等学校の主として社会科や理科、保健体育、技術・家庭、道徳の指導の中で、児童生徒の発展段階に応じて、環境に関する学習が行われている。
 現行の学習指導要項(National standards for school based curriclum)では、環境教育にかかわる内容の理解のみならず、環境問題に関心を持ち、自然環境を調べ主体的に解決する能力や積極的に問題解決に当たる態度の育成にも重点をおいて、各教科等の内容の一層の充実を図っている。また、学校外でも、環境について調べる活動等が、社会教育の一環として行われている(国立少年自然の家など)

(3)環境教育実践上の問題点
 ?環境教育が学際的な広がりをもった課題であり、学校で環境教育を進めるに当たっては、各教科、道徳、特別活動等の連携を図り総合的に扱うことが重要である。しかし、独立した教科としての「環境料」が設けられていないため、環境教育が教科の中にとどまり、総合的なアプローチを行う視点か十分でない。
 ?環境教育では自然体験などの活動が大切であるが、教員のフィールドワークに対する資質や能力が十分でないために、知識の提供に終わっている。また、体験的な活動を行っている場合でも、活動のみにとどまる学習となるなど生徒一人一人が、環境問題を自らの課題として認識し、把握するところまでは至っていない。
 ?環境教育が、教科の指導と違って正解がなく立場によって考え方が異なり、価値対立的な学習になるため、教員としても指導がしにくい現状かある。

 

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