[10] 太陽電池を普及させるための施策:日本は補助金,ドイツのアーヘンでは太陽電池で発電された電力を,電気料金の10倍の値段で買い上げる.どちらがスマートか?補助金政策が奏功するには,政府が,市場の働きをあらわす微分方程式を熟知した「ラプラスの悪魔」でなければならない.
[11] 温室効果ガスの排出を10%削減するにせよ,それを1年でやるのではなく,13年かけてのやるのだということを見落としてはならない.「禁止」と「義務づけ」の必要はなし.時間をかければ適応は容易である.
[12] 産業部門,民生部門,運輸部門のCO2排出量の推移と削減の可能性.運輸部門での削減可能性を過小評価すべきでない.低燃費車の普及とモーダルシフト.電力多消費型の家電機器の普及,自動車の燃費効率の悪化はほぼ「飽和」状態に達したことを見落とすべきではない.過去のトレンドを延長するのは余りにもナイーブ過ぎる.
[13] 温暖化対策と経済成長が「トレードオフの関係」にあるかのように言うのは誤りである.例えば,温暖化対策に費用がかかるの事実だが,だからと言って,それにより経済成長率が低下するわけでは決してない.炭素税制の導入は消費者から政府への所得移転をもたらすだけであり,政府が移転された所得の使い道を誤らない限り,経済成長率が鈍化するわけでは決してない,ただし,エネルギー多消費型輸出産業への手当ては必要.スウェーデンにならって,エネルギー多消費型産業を免税にするのも一案.
[14] 温暖化対策の結果,産業がウイナー・インダストリーとルーザー・インダストリーに分かれるのが問題.ルーザー・インダストリーのロスを最低限に食い止めるためにはどうすればよいかを思案する必要あり.最大のルーザーは石炭産業,日本の自動車,電機は明らかにウイナーである.アメリカの自動車はルーザーか?ダイムラー・ベンツとクライスラーの合併は京都会議の結果を色濃く反映している.
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