[4] 排出権取り引き(emissions trading),共同実施(joint
implementation),そしてクリーン開発メカニズム(CDM,Clean
Development)とは何か:日本政府は一貫してEUバブルを批判し続けたが,EUバブルは排出権取引の一種に他ならないし,また複数国がバブルを作って共同して目標を達成する「共同達成」が認められた.排出権取引,共同実施,クリーン開発メカニズム,共同達成は効率的な(費用対効果において優れた)排出削減をかなえるための制度である.
[5] 日本は1990年の排出量×0.94×5に等しい排出権を与えられたことになる.他方,ロシアは1990年の排出量×1.0×5等しい排出権を与えられたことになる.ロシアは売り手,日本は買い手として排出権取引市場に現れる.補足的(supplementary)という条件をどう解釈するか.
[6] 先進国間の共同プロジェクトを共同実施という.日本(投資国)が資金を提供して,ロシア(ホスト国)の老朽化した石炭火力発電所を,新鋭の天然ガス火力発電所で置き換えるというプロジェクト.ベースラインとアディショナリテイ.
[7] 途上国と先進国の共同プロジェクトをCDMと呼んで,共同実施と区別する.CDMと共同実施の最大の違いは,CDMの場合,2000年以降2012年までの削減総量がクレジットとなるが,共同実施の場合は2008年から2012年までの削減総量のみがクレジットとなる.ベースライン特定化の難しさ.
[8] 京都会議以降の日本国内の動き:温暖化対策推進本部(本部長・橋本龍太郎)の設置.通産省と環境庁の覇権争い:省エネ法と温暖化対策推進法.官僚は何を「最大化」しているのか? Stiglitzの法則:官僚は自らの所属する組織の予算と権限を最大化している.
[9] どんな対策が考えられるのか:自主的取り組み,規制的措置,経済的措置,市場を尊重する立場に立つならば経済的措置(炭素税,燃費効卒のいい自動車への優遇税税等)が優先されて然るべきである.補助金はスマートな手法ではない.自由化・国際化の時代潮流との整合性に配慮すべきである.
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