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知的障害者福祉研究報告書
平成9年度調査報告  〜知的障害者福祉研究会 提言報告〜


知的障害福祉(知的障害者についての社会援助施策)の
今後の動向と将来の課題

2 知的障害分野の福祉に関する支援、助成についてのいくつかの提案

(1)「本人の会」への支援
知的障害をもつ人達本人の団体(本人の会)に対する助成。あるいは、これらの団体の全国ネットワークづくりのための助成。
これらの団体をボランタリーに支援している関係者の養成、全国会議の開催、機関誌の発行などについての補助をお願いする。

(2)入所施設モデルの提示
現行法に定められた精神薄弱児施設、精神薄弱者施設は敷地、建物、設備のあらゆる面から生活空間として機能することはほど遠い。そこで、福祉施設の設計に詳しい建築の専門家に新しい観点から入所施設のあり方を総合的に研究してもらい、新しい時代にふさわしい入所施設のモデルを作成するための助成が必要である。

(3)入所施設変革に対する補助
将来を展望した入所施設の改良、それにともなう地域福祉システムへの発展は公(国又は地方自治体)の補助だけでは一法人の力では到底なし得ない。このような社会福祉法人の地域貢献についてこそ相応な助成が必要である。

(4)グループホームの総合的研究
グループホーム制度の総合的な調査研究を含む、我が国の実状に則して知的障害をもつ人達の「住まい」(ハード)と「生活援助」(ソフト)のあり方を集大成するための補助を行う。
一例として、スウェーデンを先進諸国のシステムと実践を紹介し、かつ我が国に適応するためにはどのように工夫、改良を加えるべきかを専門家、学識経験者、実践家とともに研究する。
なお(4)については、渡辺委員、萩田委員の提言を参照。

(5)デイセンター及びサポーティッドエンプロイメントの調査研究
知的障害をもつ人達の日中の生活を充実させるために欠かせないのがデイセンターである。今日、デイセンターのコンセプトが様々に論じられているが、まだ結論らしきものは見えない。そこで働く職員も従来の通所援護施設の指導・訓練とは別の任務が要求されている。
この「デイセンター」に関しても、上記グループホームと同格の調査や研究、『モデルづくり』が必要になってこよう。あわせて、サポーティッドエンプロイメントについても日本の実状に適応した実践可能なプログラムを作成する。
以上の調査・研究に関して助成を検討してほしい。
サポーティッドエンプロイメントについては冨安委員の提言を参照。

(6)生活援助にたずさわる職員のためのセミナーの開催
地域生活援助の第一線にいるのはグループホームの援助職員(世話人)である。一人で仕事をこなし、孤立しがちなこれらの人達に新しい情報を提供し、しかも経験交流ができるセミナーを地域別に開催することを提案したい。これによって、彼等を元気づけ相互のネットワークを形成することも期待できる。現在ヤマト福祉財団で行っている「共同作業所パワーアップセミナー」を参考にしてほしい。

(7)専門職員養成セミナーの開催
日本の知的障害者福祉分野では、専門職種が確立されているとは云えない。ソーシャルワーカー(福祉司)、サイコロジスト(心理士)、PT(理学療法士)等がどのように機能し、どんなスーパービジョンを行っているか、この分野で専門家チームをもつスウェーデン、カナダ等に学ぶ必要があろう。
そこで、大学教授など学者でなく、実際に専門家チームの一員として活躍している上記専門家を招き、シンポジウム、セミナーを開催、これに助成する。

(8)新しい理念と施策、実践モデルの紹介のビデオ・小冊子の製作と配布
『街に暮らす−スウェーデンの知的障害福祉の実践−』は、親・家族、福祉関係者のみならず多くの一般の人達に大きな反響をよんだ。過日完成をみた『街に暮らす−知的障害者の望ましい自立を求めて−』も、現状を踏まえた上で日本の知的障害者福祉に一つの問題提起ができたと確信している。
できれば、今後この種のビデオ、写真集、小冊子など親・家族、関係者のみならず、広く一般の人達の鑑賞にも耐えうる作品を製作し配布するための助成を希望したい。
今後は、海外の事情も含めて、障害をもつ幼児・児童を主題とした作品をつくり、若い世代の親達、一般の小学生、中学生向けにリリースすることを提案したい。


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