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知的障害者福祉研究報告書
平成6年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第2回「精神薄弱者福祉研究会」資料

委員ヒアリング(まとめ)

北沢清司委員 1994年6月9日 ヒアリング記録 5

北沢 清司氏(大正大学 人間学部 人間福祉学科 教授)
出席者 (財)日本船舶振興会:柴崎部長、寺内係長、高木、中村、山口
      (株)福祉開発研究所:宮森、小林
場 所 日本船舶振興会会議室

1. 現状

?@わが国における現状
○現在グループホームと同じように入所施設も増えている。
○わが国におけるグループホームは、入所施設が作ったものが多い。入所施設が出張所化するような状況が見られ、今後問題が生じてくる可能性がある。
○現行のマンパワー制度の中でグループホームが拡がっていくのは難しい。
※入所施設の指導員が、そのままグループホームの世話人に移行するとした場合、これまで利用者50人に対して15〜6人であった指導員は、利用者5人のグループホームでは(重度の人も含めた)10戸で30〜50人の世話人が必要となる。
○スウェーデンやイギリスにおける福祉マンパワーを支えているのは、パートタイマーや失業者である。わが国におけるマンパワーの問題として、このような外国の現状を日本の親は受け入れることができるだろうか。
○わが国では、ケースマネージメントの専門家の養成ができていない。
また、わが国ではスーパーバイズできる人が極めて少ない状況である。現在、スーパーバイズができているのは病院だけである。入所施設における24時間の援助に対するスーパーバイズは難しい。

?A親の意識
○親は、自分の子どもが外で生活することに非常に不安を感じている。
例えば、レスパイトサービスやジョブコーチ等のサービスがあっても、自分の子どもは重度であるために、その対象外であると思っている。
○親の意識が、子どもの意識とずれていることがある。
子どもは、入所施設を望んでいないにもかかわらず、親はその建物が立派であれば満足してしまうというような状況がある。
○このような親の意識の中にある、様々なギャップを埋めることができるような活動が必要である。
例えば、地域で暮らすことは可能なんだという実例を、親に見せることが必要である。
○親自身が、自分の子どもにとって"身の丈にあった生活"ということを発想できるかが1つのポイントであると思う。

2. 新しい生活形態に関する理論構築の研究

○知的障害者の生活のどの部分に対して援助を行うのか、彼らの生活上の問題を明らかにする必要がある。
○わが国の親たちにとって、「良いグループホーム」とは良く指導、良く援助を行う職員がいるところである。しかし良く指導、良く援助する事が結果的に過指導となる可能性がある。「放っておく」ことがより自然であるという発想が大切である。
○現在の知的障害者に対するプログラムは指導、訓練の概念から抜け出ていない。「発達指導」という考え方ではなく、ある時点でできることとできないことを割り切って明確化してしまい、そこに援助を行うというあり方が望ましいのではないか。
〇地域で生活するのは指導、訓練を受けるためではない。指導、訓練ではなく最低限要求すべきこと(例えば、生活との関係の中でしてはいけないこと)を求めるだけで良いのではないか。その最低限求められる要求が明確化されれば、ケースマネージメントは進めやすくなる。

3. 通所とレスパイトを組み合わせた事例を作る

○モデル地区を選定して、通所施設とレスパイト(ホーム)サービスの機能を組み合わせたものを作る。
○基本は通所+レスパイトとし、グループホーム、通所施設、レスパイトサービスのそれぞれについて、個々にどのような問題点があるか検討する。
古い施設同士を合併して作ると、どうしても無理が生じてくるため、何もないところから始めることが必要である。

4. 先駆的活動の見られる入所・通所施設への補助

○意欲的、先駆的な活動を行っている入所施設に対して援助を行い、その中でのシステムの拡大を図る。

5. まとめ

○名案ではなく、様々な選択肢ができることを願う。「これが全て」という捉え方は望ましくない。そのような意味では入所施設も1つの選択肢である。選択の幅を広げ、安心して生活できる環境づくりが大切である。


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