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知的障害者福祉研究報告書
平成6年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第2回「精神薄弱者福祉研究会」資料

委員ヒアリング(まとめ)

柴田洋弥委員長 1994年6月8日 ヒアリング記録 4

柴田 洋弥氏 (社会福祉法人武蔵野障害者総合センター
精神薄弱者更生施設(通所) デイセンター山びこ 施設長)
出席者 (財)日本船舶振興会:高木
      (株)福祉開発研究所:宮森、小松、小林

1. 現状について

○中、軽度知的障害者の施策的な流れは、必然的に地域生活へと向かって行くだろう。
※東京都、神奈川県において入所施設に入っているのは高齢、重度の知的障害者であり、中、軽度の知的障害者は入所施設には入らない。
○現在、養護学校を卒業して入所施設に入るという流れはなく、これは、親の基本的な考え方が変化してきているためである。
○作業レベルにのれる人は、集団生活ができるということであり、現在のグループホームにおいても生活できる人達である。
問題は、作業レベルにのれない重度知的障害者についてであり、彼らの地域生活援助に関する施策は全く手が付けられていないのが現状である。

2. 重度知的障害者の地域生活への支援

?@通所施設に関する建物の補助とノウハウの提供
○重度知的障害者の通所施設は次の3つのタイプに分けられる
1 永住型(グループホーム型)→老後生活の場としての施設。
2 通過型(ショートホーム型)→10〜20代の若い世代の人達が少しずつ訓練を行う場としての施設。
3 レスパイト型(緊急対応型)→利用者の状態が多岐にわたるために、より専門的な対応が求められる。

○部屋の構造が利用者に及ぼす影響は大きい。肢体の不自由、心理面をも考慮した構造が求められる。自閉症など、重度の知的障害者ほど個室の方が適当である。船舶振興会に求められるのは、建物への補助+その建築的ノウハウである。

?A分散型入所施設を作る
○現行法内においても、やり方によっては知的障害者の地域生活を支援することができる。例えば、昼の活動の空間(デイセンター、通所)と居住空間(グループホーム)を分けて設置し、それをひとまとめに考えて1つの入所施設として機能させる。

?Bグループホームに関するノウハウを研究する
○現状において自治体は、入所施設(市民向けの)は作っても、通所についてのシステム、グループホームについてのノウハウは持っていない。重度知的障害者のグループホームに関するノウハウを研究する必要があると感じている。
○重度知的障害者のグループホームは地域の中にあることが必要である。重度知的障害者は環境になれるのに大変な時間を要する。しかし、自宅の周辺では迷わないように、その地域に慣れてしまえば介助の負担は軽減するのである。
※横浜市では、制度的に重度知的障害者を対象としたグループホームを作っている(職員4人:利用者4人→職員の内訳は2人(市の負担)+2人(所得保障から))。
○重度知的障害者のグループホームがうまくいかないのは、ノウハウがないからである。理念、人権思想よりまず生活手法について考えることが大切である。

?Cデイセンターについて
○新しい概念でのデイセンターが必要と考える。
○毎日、日替わりのプログラムの組まれているデイセンターであれば、若い世代の人達は毎日でも通いたいと思うであろう。
○一人当たり400万円/年の費用をかければデイセンター(月曜日〜金曜日の昼の生活)はできる。
○重度知的障害者はタイプは多様であり、職員はその多様な利用者に対応できるだけのノウハウ、専門性を持たなければならない。
施設は大規模である必要はなく、30分で通える範囲に1ケ所のデイセンターがあるのが望ましい。運営は1つのグループで5〜6人が限度である。
○デイセンターは「訓練」の場ではなく、「社会参加」「自己実現」を目的とした空間である。


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