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知的障害者福祉研究報告書
平成6年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第3章 地域生活援助 (レスパイトサービス)の役割と機能

2. サービスを提供する概念

レスパイトサービスは、一義的には障害児(者)本人と親・家族の介護としての関係が、一時的に第三者による関係に替わられることで、親・家族の時間的・身体的・心理的により自由な家庭環境を作り出す援助として考えられる。
しかしながら、障害児(者)本人を主体として本来的にサービスの意味を考えれば、親・家族はあくまでもその役割があり、介護における第三者の役割は両者から見て人的なサービスではあるが、『生活の道具』として生活の質の向上を図るものである。

レスパイトサービスを障害者本人と家族の『生活の道具』として考えれば、サービスの使い勝手や料金、申し込みから実施までの早さ、要請に対する質や信頼度などがサービスの評価を決めるものである。
一般的なサービスであれば、利用する側と利用される側との拮抗する部分がサービスの内容を変え、質を発展させる原動力となる。その意味で、利用者と供給者に何らかの拮抗する力と、供給者に拡大・発展するための何らかの動機付けとなる市場原理的なものが必要となる。サービスの需要と供給のバランスを最も効率的に行うには、利用者に評価の裁量権を提供することが最も効果的である。その関係に第3者的な機関が介入することは、評価のきめ細かさやサービスの質的な発展には不向きとなる。
以下にサービスの供給において、いくつかの関係を模式化して検討した。

?@供給者側がサービスを決めて提供する形


現在の福祉サービスの提供方法がこれにあたる。この方法のメリットは、規格化、標準化したサービスを提供することに適する。システムの規範は平等性と公平性であり、質的な均等性が求められる。この方法のデメリットは、利用者と行政の間が遠いために情報のやりとりがしずらい。
また、個別的な条件や利用方法に柔軟性が乏しく、サービスの組み合わせや申請方式によるため、本来必要な援助とは質的に異なる援助となる場合がある。また、供給者においても利用者に即応した対応や内容とするためには、行政からの支援が受けられない場合もあり、常に行政に対する複雑な要望が集まる形になる。

?A複数の供給者のサービスを利用者が選択していく形


利用者に一定の財政的援助が行われ、供給者からのサービスに対して選択的に利用する方法。競争的な原理が働くことでより質の高いサービスが提供される。
一般のサービス供給はこの形式をとり、利用者の選択による競争原理と市場の拡大が供給者の動機付けとなる。この方法のメリットは、利用者の消費動向によりサービスは変化・拡大する柔軟性を持つことと、競争による質的な向上とコストの低下をねらうものである。この方法の規範は、利用者の主体性と、市場の自由な競争である。
この方法のデメリットは、競争的な機構が働くほど市場が大きくない場合は、成立しないことになる。また、不当な商品を生まないよう、利用者保護のための行政的な監視が必要となる。

?B行政と利用者が供給者をサポートし、サービスを育成していく形


利用者に財政的援助を行い、利用者と行政が共同で供給者を育成し、サービスの質や方法を監視する。この方法のメリットは、利用者が中心となってサービスを効率的に提供できること、サービスの柔軟性や個別の対応に即応させることができること、市場の規模に関係なく地域で成立させることができることである。利用者自身がサービスの内容と供給者の育成を担う責任を持つことになり、審議機関の役割が大きい。
デメリットと言うよりも、基礎的な条件として地域で必要なサービス供給者を育成できるかがこのシステムの課題となる。


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