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知的障害者福祉研究報告書
平成6年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第3章 地域生活援助 (レスパイトサービス)の役割と機能

1. レスパイトサービス(Respite Service)について

レスパイトサービスは、我が国の短期入所事業と比較して、利用の理由、対象者、期間等においてより広い概念を持ち、地域生活援助において私的事由による人的及び拠点の利用を柔軟に拡大したものとしてとらえることができる。
我が国では任意事業として行われているものではあるが、一時保護として現行の短期入所事業の手続きを簡略化することによって一部は似通ったサービスともできるが、レスパイトサービスにおいては主体の考え方やサービスメニューの枠組みを利用の前提としない点で、現行の生活支援事業の方法とは性質が異なるものである。
実際の場面においては、資源としての人材や拠点の量的な限界により、利用者及び家族との話し合いにより、サービス提供における優先順位をつけることもあり得る。
また、緊急一時保護に対応するための保険的な人材及び拠点の余裕も必要となる。
レスパイトサービスが援助の供給方式(対象範囲、登録方法、対応エリア等)、援助内容(緊急一時保護、時間保障、夜間対応等)、職員業務内容(コーディネーター、介護、相談)のうち、どの内容の利用が大きくなるかは、地域の社会資源によって異なるものとなる。

レスパイト(Respite)の語源はラテン語のRespectumであり、古いフランス語のRespit(現代のフランス語はRepit)それが英語のRespiteとなった。
なお、発音はレスパイト又はレスピットである。元の意味は「ふり返る」、「省みる」であり、RespectあるいはRetrospectと語源を同じくする。
転じて、「しばらくの猶予」「延期の許可」「一定の期間の解放」「苦役あるいは苦労からしばらくの間解放し、疲れを癒すこと」の意味に用いられている。
※ 「厚生省心身障害者研究(平成3年度)レスパイトサービスの基礎的研究」より転載

「厚生省心身障害者研究(平成3年度)レスパイトサービスの基礎的研究」における定義においては、次のように書かれている。
「レスパイトサービスとは、障害児(者)を持つ親・家族を、一時的に、一定の期間、障害児(者)の介護から解放することによって、日頃の心身の疲れを回復し、ほっと一息つけるようにする援助」

東久留米市の「このみ」の根来正博によれば、レスパイトサービスをメニューで括るのではなく、サービスの留意事項を上げてこのサービスの意味を説明している。

(1)障害児・者が普段の生活を継続できること
(2)障害を持つ本人に主体性があること
(3)親・家族が受入れ先を納得して安心して利用できること

この中で、居住施設の短期入所制度と決定的に違うことは、本人の日常生活を主体的に継続させる点を上げている。それは、本人の日常生活に即した援助であり、親向けの視点と、本人向けの視点がバランス良く整った時に成り立つもの−と述べている。
レスパイトサービスの利用理由は、?@緊急一時保護、?A介護者が生活上必要な時間の確保、?B日常的な介護困難への一時対応があり、サービスメニューに束縛されない提供システムを重要としている。

現在までの地域生活援助のサービスの提供方法は、サービスメニューの平等性と均質化が求められ、個別のサービスニーズに対して対応する手法がとられていない。その意味で、レスパイトサービスは人的資源の整備としての役割が大きい。このことは、根来氏が言われる「家族にとっては保険的な意味もある」という言葉に象徴的に考えられる。
また反面、レスパイトサービスとしての必要な資源は、拠点、人材、移動機能であり、利用に当たっての人的な代価を利用者負担とすれば、拠点や移動機能を行政等や法人が整備することにより、サービスを妥当な価格で実施できるものとも考える。
レスパイトサービスは、サービス提供に創造的な手法が必要となり、サービスの均質性よりも、生活環境と家族関係を維持する上で必要なものという点で信頼度の高い供給者を作る必要があるものである。そうしたサービス供給者を育成すること、継続的に維持することがこのサービスの課題となろう。


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