提案要旨
違いを楽しみましょう
佐藤 智美(聖徳大学助教授)
日頃、保育所に子どもを預けて働く母親の一人として感じることを、また、保母になろうとする学生を教育する教員の一人として考えさせられてきたことなどを言葉にする機会を与えてくださったことをうれしく思います。今回は主として以下のような視点で進めてみようと思います。
1. 人はそれぞれ違って当たり前
私たち人間はそれぞれ外見が様々に異なるように、一人一人がその人らしさを持った存在です。お互いに違っているのが当然で、同じではありません。誰でも小さな子どもを育てている時には、親として自分の子どもの発達が気にかかって、育児書や育児雑誌を広げたことが何度もあるかと思います。すると、多くの場合発達には個人差があるということが書かれています。小さな子どもの発達には個人差があるために、子どもの発達の遅れというよりも、その子どもの個性としておおらかに受けとめて接することが必要であることが指摘されています。このような指摘に親として少なくとも一時的に慰められたりするものですが、子どもが成長するにつれ、いつの間にか発達をはじめ様々な面で他人と同じようであること、あるいは他人と違っていないことが強調され大切にされてはいないでしょうか。人生のほんの初めに認めてもらえた「その子その子の……」が忘れられていくように思えてなりません。
2. 日本人の多くは日本人
厳密な意味ではありませんが、日本は単一民族、単一言葉の世界的にみても珍しい国です。地球上には、複数の民族、複数の言語で一つの国をつくっている国が数多く存在します。そのような社会では、多様であることが当たり前であり、互いに違いを認める土壌を努力を積み重ね時間をかけて作ってきたのでしょう。そこに生れ育つ子ども達は