(4) 当事者が必要としているものに対応しているのか
私たちが知っている地域の障害者が必要としているものは、『ガイドライン』等で想定されている利用者のニーズとは異なったものである。
彼らは何を必要としているか。それはまず、社会資源をどのように使うか、使いこなすかについての知識であり、技術である。これには制度的なものもあるし、そうでないものもある。例えば、地域で暮らそうとする時には、まず暮らす場所を探さなければならない。福祉サービスにしても、必要としているのは、個々のサービスについて何をどのようにどこまで使えるのかという具体的な利用の方法についての知識である。そしてたしかにこれまでのサービスはこうした要求に対応していない。知識があるのに対応していないというよりは、知識自体が窓口の職員に欠けている場合が多い。では、この『ガイドライン』にあげられる専門職種の人たちはこうしたニーズに十分に対応できるだろうか。この点については次項で検討する。
次に、障害をもつ人が地域で生活していくためには心理的なサポートの果たす役割が大きい。このことは、自立生活センター・立川によるケアガイドラインの試行事業によっても明らかにされた。そしてここで必要とされているのは、ほとんどの場合、精神科における治療ではないし、また心理療法でもない。必要とされているもの、彼らが獲得したいと思っているのは、生活していく上での自信、自らに対する信頼感の獲得である。『ガイドライン』でも唱われている「エンパワーメント」(*04)の重要な一部をなすのは、こうした部分である。そしてそのために必要なのは、同様の立場に置かれてきた経験をもつ人に話を聞いてもらうことであり、助言と励ましを受けることである。『ガイドライン』に言われる「(複合的な)ニーズ」がこうした部分に焦点を当てているとは思われない。
おそらくこれは、障害者が地域で暮らすということがどういうことであるのかについての認識のずれに起因している。親もとから離れて暮らす、あるいは施設から離れて暮らすということが、地域で暮らすということのイメージの中にはっきりと含まれていないために、身体的、身辺的な部分にもっぱら関心がそそがれる。地域で暮らすということは、新しい生活を始めるということであり、新しい生活を構築していくことであり、それは、自分自身にあるためらいや躊躇を含め、そこに立ちはだかっている壁を自らが壊していくことなのであり、私たちがまずすべきは、それを支援することなのである。