業界をとりまく環境
質・量ともに需要変動が予想される
造船業・舶用工業は、受注産業である性格上、需要の変化は避けて通れない。前回のビジョン以降、需要構造をはじめとして環境が大きく変わっている。
今後の海外市場は、韓国に加え中国の成長が予想され、国際市場での競争激化が予想される。そうした中、造船・海運大国であるわが国が、船舶の安全性等でリードしていくことが期待されている。
国内海上輸送構造の変革が進みつつあり、内航海運はその影響を強く受けている。需給調整のための規制緩和が次第に進み、今後数年間はその傾向が続いて、内航船舶需要は質・量ともに変動が予想される。
労働力の安定確保は生産現場における重要な課題であるが、従業者の年齢構成は歪んでおり、高齢者・女性など新たな労働力にも目が向けられつつある。情報化・ハイテク化を活用することにより、部門の壁を超えた生産性向上の可能性が芽生えつつある。
施策の動向
構造転換を促進する対策が始まる
運輸省の造船・海運業に対する施策は、規制緩和による競争条件の整備や技術開発、モーダルシフトの推進などの取り組みが進められている。一方、長らく需給調整の規制下におかれてきた造船・海運業界に対し、構造転換を促進するための施策が平成10年度から始まる予定である。
需要見通し
2005年までは大型船中心に高水準、2005年以降の対策が必要
今後の四国地区造船業の先行きを占う意味で、需要見通しの試算を行った。
世界・国内の需要変動の影響を受けるとしても、生産性が引き続き向上し、競争力が維持・向上されると仮定すると、年間建造量は2009年にかけて210〜240万総トン台の水準になる。しかしながら、労働力不足が表面化する一方、機械化等の対応が図られない場合、2005年に200万トンを、2009年には180万トン台をに割り込む恐れがある。
中小造船については、産地としての総合力が発揮できれば、当面は受注競争が厳しいものの、2005年以降には平成8年頃の水準にまで回復し、2007年には20万トンに達することも期待できる。しかし、生産性向上が進まず、地元内航船主の構造改善が遅れる時は、ここ5年間は10万トン程度の水準に止まり、10年後も20万トンには届かない。
いずれにしても、2005年以降の全体の仕事量の減少は避けられず、メガフロートなど新規需要開拓への取り組みが必要となろう。