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四国地区において、造船業・舶用工業の地域経済に占める位置は高く、今後魅力ある産業として発展していくには、新たな産業展開を図り、振興していくことが大切である。

今般、将来の需給動向も踏まえ、造船業・舶用工業振興の指針となるビジョンを策定した。

 

現状

大小の二極化がみられる

四国地区は造船業、殊に中小造船所が多数集積し、過去数回の不況にも耐え、発展してきた。昭和62年の不況以降は、順調に建造量を増やしてきており、特に近年は外航船を積極的に受注し、200万総トンを上回る建造実績を上げている。しかし、最近、専ら内航船を建造してきた造船所は手持ち工事量が激減しており深刻な状況にある。

設備投資を計画的に行ってきたところとそうでないところ(小型造船所が主)とで、生産体制に格差が付きつつある。また、現場を支える労働力の高齢化が進み、このままではあと10年も経たないうちに、建造現場で混乱をきたすことすら懸念される状況となっている。

舶用工業は、大半が小規模で、近年は好調な船舶建造に支えられ、仕事量は多いものの、採算性の向上や労働力の確保が課題となっている。

四国地区における造船・舶用工業の製造業に占める割合は5%に満たないものの、輸出額に占める割合は40%を超えており、輸出産業として貢献している。しかしながら、造船業は「自己完結性」が強く、地域との結びつきは今まで強くなかった。

 

57年ビジョンの検証

設備は改良されたがソフト面で未実現の点が多い

昭和57年に四国地区造船業の長期ビジョンが策定されている。その中で提言された事項の実現状況をみると、機械化による生産性の向上など、実現された項目もある一方、船舶の標準化、魅力ある職場の提供、造船所間の協調と連帯、関連工業との一体的な発展等、実現していない項目も多い。

この原因は、外的なものとしては、?@昭和60年代初めに一時不況に陥ったものの、その後業績が回復、?A受注産業であり景気の動向に翻弄されてしまい自発的な問題解決を図りにくい、?B需要者である海運業界の意識改革が遅れている、といったことが挙げられる。一方、造船業界内部の要因として、?@「一国一城の主」意識が強く共同での問題解決が図られなかったこと、?A逆境に耐え抜くことで自企業の生き残りを図ろうという意識等があった。

 

 

 

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