日本財団 図書館


第9章 罰則

 

船舶法上の義務の履行を確保するために、さらにその義務の違反に対しては制裁を加えるために、罰則が設けられているが、すでに各章において当該義務に関連して述べたので、ここでは特則についてのみ述べることとする。

 

1. 船舶法に規定する罰則

(1) 代行船長に対する罰則の適用  船舶法第22条(国籍を詐る目的をもってする国旗掲揚等に対する制裁)、第23条(外国船の不開港場寄港等に対する制裁)及び第26条(国旗掲揚義務の違反等の罪)の規定は、いずれも船長に対して刑を科するものであるが、これらの規定は、船長に代ってその職務を行う者に対しても、これを適用するものとしている(法28条)。すなわち、船長が監督の義務を有しない場合の罰則の適用者を明確にする趣旨である。

(2) 共犯の規定の不適用  船船法第22条、第23条及び第26条に定めた罪については、刑法第60条ないし第62条(共犯に関する規定)の規定を適用しないものとしている(法29条)。ここに規定する事項の義務違反は、船長の地位及び職務のみに関して起るものであるから、船長を罰すれば、懲戒の目的を達しうるとするものである。

(3) 船舶所有者の法定代理人の処罰  船舶法第27条(法定事項標示義務、登録に関する義務、船舶国籍証書に関する義務の違反の罪)の規定は、船舶所有者に対して罰を科するものであるが、船舶所有者が未成年者又は禁治産者であるときは、その法定代理人にこれを適用するものとしている。ただし、営業に関して成年者と同一の能力を有する未成年者については、この限りではないものとする(法30条)。

(4) 船舶管理人等に対する罰則の適用  船舶法第27条の規定は、船舶共有の場合における船舶管理人又は商事会社その他の法人の代表者若しくは清算人にこれを適用するものとしている(法31条)。船舶所有者が共有者又は法人である場合の罰則の適用者、すなわち被告たるべき者を明確にしたものである。

 

2. 「小型船舶の船籍及び総トン数の測度に関する政令」及び「小型船舶の船籍及び総トン数の測度に関する省令」に規定する罰則

(1) 罰則の委任及び罰金額  この政令又は省令に罰則を規定する根拠は、船舶法第21条第2項の委任規定に存する。また、船舶法第21条第3項において、規定しうる罰は千円以下の罰金に限定しているにもかかわらず、当該政令又は省令において2千円(現行においては2万円)以下の罰金を科するものと規定しているのは、罰金等臨時措置法(昭和23年法律第251号)第3条において、委任に基づいて規定することができる罰金額の最高限度を定めている(現行においては2万円)からである。

(2) 両罰規定  総トン数5トン以上20トン未満の船舶。(端舟その他ろかいをもって運転する舟を除く。)の所有者の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、当該所有者の業務に関して、前記政令第11条(船籍票に関する義務違反の罪)若しくは第12条(小型漁船の総トン数の測度義務違反の罪)又は前記省令第12条第1項(船舶の標示義務違反の罪)の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、当該船舶の所有者に対しても、各本条の刑を科するものとしている(船籍政令13条、船籍省令12条)。すなわち、行政取締りの実効を期するため、また刑事責任者は現実の行為者たる自然人であるとする立場から、いわゆる両罰規定を設けているのである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION