した船舶に対し、その旨を証明する文書を発給することを要するものと規定している。
(注2) 船舶総トン数測度に関する国際規則を採用する諸国においては、国旗(登録)を証明する書類とトン数を証明する書類とを別個に発給する制度をとっている。
2. 船舶国籍証書の船内備付の義務
船舶国籍証書は、その性質上必ず船舶に備付けるべきである。船舶法上、明確な規定は存しないが(22条、22条ノ2参照)、船員法においては、船長はこれを船内に備え置くことを要するものとする(船員法18条)。
なお、日本船舶以外の船舶は、国籍を詐る目的で、日本船舶の船舶国籍証書又は仮船舶国籍証書により航行したときは、船長は2年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられ、この場合において、船長の所有又は占有に係るその船舶は没収されることがある(法22条1項)。また、船舶国籍証書若しくは仮船舶国籍証書の交付を受けていないこと、交付を受けていても所有者の変更その他の記載事項の変更があったにもかかわらずその書換申請を了していないこと又は船舶国籍証書の検認を受けていないこと等の理由により、当該船舶の船舶国籍証書の呈示を不利とするため、当該官吏の臨検に際し、これを呈示する目的で、他の船舶の船舶国籍証書又は仮船舶国籍証書を船内に備え置き、その船舶を航行させたときは、前記と同様の制裁がある(法22条ノ2)。
3. 記載事項の正確の確保
船舶国籍証書の記載内容は、常に実質関係と一致していることを要するものであるがゆえに、その正確性の確保のため、次の措置がとられている。
(1) 船舶国籍証書の書換申請等の強制
船舶国籍証書に記載した事項に変更を生じた場合には、船舶所有者はその事実を知った日から2週間以内にその書換を申請すべきものとし、また船舶国籍証書が損傷又は滅失した場合にも、その書換又は再交付を申請すべきものとする(法11条、12条)。そして、その違反に対しては、船舶所有者を5万円以下の罰金に処することをもって、その履行を強制している(法27条)。
さらに、船舶国籍証書の記載事項のうち、所有者の変更(所有権の移転をいう)があった場合には、新所有者はその船舶国籍証書の書換を申請した後でなければ、当該船舶を航行させることを得ないものとする。ただし、その事実を知るまでの間及びその事実を知った日から2週間以内は猶予される(注)(法6条ノ2)。この違反に対しては、船長は2年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられ、この場合において船長の所有又は占有に係る船舶は没収されることがある(法23条)。かくのごとく、所有者の変更につき特則を設ける趣旨は、船舶所有権が何人に帰属するかということが、船舶がその所有者を中心に諸種の義務を課せられている立前からしても、常に明確に船舶原簿及び船舶国籍証書に登録、記載されていることを船舶行政上必要とするからである。