をその事由が発生したときから一定期間内になすべきものとし、また、それらの懈怠に対しては刑罰を科し、さらに官吏を欺き船舶原簿に不実の登録をなさしめた者に対しては、2月以上3年以下の懲役に処するものとすることにより(法24条。未遂罪も罰せられる)、船舶原簿の登録の真実性を確保することに努めるのである。そして、船舶の登録は、船舶自体の個性ないし同一性については職権調査主義によりこれを決定し、所有権については登記を基礎として登録をなすが、なお錯誤又は遺漏により、実質関係と一致しない登録がなされることがあるので、これを訂正する手続が定められている。
登録の訂正とは、既に存在する登録につき、当初の登録(新規、変更又は抹消の登録)手続における過誤により原始的に錯誤又は遺漏があり、そのために登録されている事項と実質関係との間に不一致が生じている場合に、これを是正する目的でなされる登録をいうのである(細則47条ノ2)。
2. 登録の訂正の要件
登録の訂正は、既存の登録を登録当初にさかのぼって訂正、変更することにより、登録の真実性を確保しようとするものであるから、登録の訂正をなしうる場合は、この趣旨から限定されるのである。すなわち、登録の訂正の要件は次のごとくである。
(1) 登録につき錯誤又は遺漏があること 錯誤とは、登録上本来なされるべき記載を欠き、代りに誤った記載がなされることをいう(汽船を帆船と誤記し、所有者の氏名を誤記するなど)。遺漏とは、単に消極的に真実の記載を欠くことをいう(総トン数の記載の脱漏など)。錯誤又は遺漏は、船舶原簿に記載されている事項についてのそれであることを要する。
船舶の登録は、船舶の登記と一致すべきであるが、その登録と登記とがともに錯誤により実質関係と一致しない場合がある。かかる場合には、登記を基礎とする所有権に関する事項については、まず登記の更正又は抹消をなした後に登録の訂正の手続をなすべきである。
(2) 錯誤又は遺漏を生じた登録事項の範囲 錯誤又は遺漏は、当該船舶原簿の登録事項の全部について生じたものであるか、あるいは一部について生じたものであるかを問わない。登録事項全部の錯誤、すなわち、船舶が原始的に存在しない場合や、新規登録当初における所有権取得の無効の場合には、当該船舶原簿は当然全部を抹消すべきものであり、登録の訂正の問題である(原始的理由による抹消登記に対応するがごとき抹消登録の規定はない)。また抹消登録(法14条又は5条ノ2・4項の抹消登録)をなすべき理由がないにもかかわらず抹消登録をなした場合のごとき錯誤も、登録の訂正の問題として、その登録(抹消直前に効力を有していた登録)を回復するのである(抹消回復登記のごとき規定は存しない。明治36年7月31日管船局長通達管発坤8919号)。
(3) 登録と実質関係の不一致が当初の登録手続において生じたものであること 実質関係との不一致が当該登録の完了後に新たに発生したことを理由とする変更登録又は抹消登録と異なる。