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税法96条)以外の港その他の場所をいう。日本各港(港則法等の港に限定されない)間における運送とは、いわゆる沿岸貿易をさし、各港が同一海岸にあるか否か、また公海を航行するか否かを問わない(注1)

日本船舶でないものは、法律若しくは条約に別段の定があるとき(注2)、海難若しくは捕獲を避けようとするとき(海難を避けようとする場合とは、台風、津波等の異常の天候悪化、機関故障、船体破損、浸水、火災等の船舶事故、燃料不足、その他やむをえない緊急の事故により、運航に重大な支障を来たすおそれがあり、最寄開港まで航行する時間的余裕がないと認められる場合をさす。昭和31年3月15日運輸省海運局回答海外48号)、又は主務大臣(運輸大臣、運輸省設置法3条の21項34号)の特許(許可の意である)を受けたときでなければ、不開港場寄港又は沿岸貿易をなすことができない(法3条ただし書)。もし、違反行為があったときは、船長は2年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられ、また船長の所有又は占有に係るその船舶は没収されることがある(法23条)。

不開港場寄港又は沿岸貿易について、運輸大臣の特許を受けようとする者は、管海官庁(不開港場寄港の特許にあってはその不開港場、日本各港の間における物品又は旅客の運送にあってはその物品の船積地又はその旅客の乗船地を管轄する運輸局長)を経由して申請書を提出しなければならない(細則3条ノ2)。なお、外国貿易船(外国貿易のため外国に往来する船舶)は、原則として税関長の許可を受けなければ不開港に出入することができないことに注意を要する(関税法20条、113条)。

日本船舶は、以上のごとき特権を有するものであるから、その国籍を喪失させる事由は、船舶所有者にとって大なる利害関係を有し、またわが国海運の発展にも影響することになるので、戦時には、外国人に対する船舶所有権又は持分の移転を禁止又は制限をなしたのであり(戦時海運管理令6条参照)、平時においても日本船舶を所有することができない者に対する国際船舶(総トン数2,000総トン以上で一定の要件を満たす外航船舶)の譲渡等について届出主義をとり(海上運送法44条の2参照)、また、日本船舶たる資格維持のため、共有者又は社員の持分買取権を認めている(商法702条参照)。

(注1) 沿岸貿易とは、一国の同一沿岸に沿っての領海内における貨客の水上輸送をいうのが本来の意義であるが、現在においては、各国とも広義に解している。沿岸貿易は、国際法上自国船舶に独占させることができるものとされ、各国の国内法にゆだねられている(日・米通商航海条約19条6項、日本・ノールウェー通商航海条約12条1項等参照)。

(注2) 法律については、関税法20条1項ただし書の規定がある。条約については、いわゆる連続寄港に関する規定及び沿岸貿易に関する相互主義の規定をおいているものがある。連続寄港とは、1国の2以上の港向けの貨客を国外から輸送する場合に、順次それらの各港間を航行し、当該港向けの貨客をおろすこと、また逆に2以上の港から国外向けの貨客を輸送する場合に、順次各港間を航行し、貨客を積むことをいうのであり、各港間の輸送のみを見ると、沿岸貿易であると解しうるが、かかる全輸送の一部にすぎない国内各港間の輸送を認めないことは不合理であるから、条約に連続寄港を認める旨の規定をおくのが通例である(日本・ノールウェー通商航海条約12条2項、日・ソ通商条約9条等)。沿岸貿易を例外的に外国船舶に認める場合には、相手国も当方の船舶に同様の許可を与えることを条件とするいわゆ

 

 

 

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