では、「船舶に国旗を掲げる権利を付与する条件を規制する規則」が採択されたが、実現するに至らなかった。その後国際連合が成立するに至り、その国際法委員会において、国際法の漸進的発達及び法典化に関する諸問題の一環として、船舶の国籍を採り上げているが、国籍取得の要件の決定については、各国の国内法に一任している。すなわち、1949年の同委員会の第1会期以来、公海制度及び領海制度を含む海洋に関する諸問題を重要議題として審議し、1956年の第8会期で最終報告として作成した「海洋法案」は、1958年2月下旬からジュネーヴで開催された国際会議で討議され、「公海に関する条約」を採択した。
その後、1994年11月16日に「海洋法に関する国際連合条約」が発効し、当該条約においては、いずれの国も、公海において、自国の国旗を掲げる船舶を航行させる権利を有すると規定し(90条)、次いで、いずれの国家も本来自由に自国船舶としての国籍付与の条件を定めることができるという従来の一般原則をそのまま認めている(91条1項前段)。ただ、その場合に、その国籍が一般に承認されるためには、旗国(船籍の属する国家)と船舶との間に、「真正な関連」が存在することを要する(91条1項後段及び94条1項)ものとしていることは注目に値する。この規定は、いわゆる便宜国籍(置籍)船について各国の注意を喚起するためのものである。また、船舶は、一国だけの国旗を掲げて航行するものとし、原則として、公海では、旗国の排他的管轄権の下におかれる(92条1項)が、航行中の船舶が自己の便宜によって、2以上の国旗を使用するという国旗の乱用に対する制裁として、かかる船舶は無国籍の船舶と同一視されるのであり、二重国籍は承認しないことを積極的に規定している。(92条2項)
第2節 日本船舶
第1款 日本船舶の意義
1. 日本船舶とは、日本の国籍を有する船舶(第1章第2節第1款参照)をいい、次の船舶が日本船舶とされる(法1条)。
(1) 日本の官庁(国家の諸機関)又は公署(地方公共団体の諸機関その他の公の機関)の所有に属する船舶
官庁の所有に属する船舶のうち、海上自衛隊に所属する船舶(海上自衛隊又は防衛大学校が自ら本来の目的に使用する場合に限る)は、当然日本の国籍を有する船舶ではあるが、船舶法の規定の適用がない。なお、海上自衛隊が本来の目的のために使用する(傭船する場合等)日本船舶たるべき私船についても同様である(自衛隊法109条)。
(2) 日本国民の所有に属する船舶
日本国民たる要件は、国籍法(昭和25年法律第147号)によって定められる。船舶共有の場合には、共有者全員が日本国民であることを要する。
(3) 日本に本店を有する商事会社であって、合名会社にあっては社員の全員、合資会社にあっては無限責任社員の全員、株式会社及び有限会社にあっては取締役の全員が日本国民であるものの所有に属する船舶(注1)
(4) 日本に主たる事務所を有する法人であって、その代表者の全員が日本国民であるものの所有に属する船舶
日本に主たる事務所を有する法人とは、民法上の法人をさす。