5・4 システムの基本概念
前節図5・9にレーダーをセンサーとして衝突を回避するプロセスを図示したが、このプロセスを実際に機能させるARPAの動作の概念を機能別に大別すると、以下の四段階に分けることができる。
5・4・1 第一段階:レーダー情報からの目標の検出
これは、レーダーのプロッターに目標を人手でプロットすることに相当するものである。いま自船の周囲に船舶が一隻あったとすると、これはレーダーで検知することができる。すると、この目標の信号はデーター処理器で処理をされて、自船に対する方位と距離の信号として電算機に転送される。すなわち、この第一段階は必要とする相手船の位置のデーターを電算機へ転送する機能であって、レーダーの情報を量子化する機能のほかに、雑音や船以外の情報を除去する機能等が含まれている。
5・4・2 第二段階:目標の追尾
レーダーのプロッターに人手によってプロットする場合には3分から6分の間隔で行うのが普通であるが、ARPAでいう追尾とは、自動的に一定の時間間隔でプロットしていくことである。これは、言い換えれば時々刻々変化する目標の位置のデーターを、先に検出した目標位置のデーターと比較しながら、これが同一の目標であることを判定し、同時に、同一目標の位置のデーターの変化を計算するために、同一の目標ごとにデーターをファイルすることである。
5・4・3 第三段階:衝突の危険性についての判定
これは、前段階の時々刻々変化する同一目標の位置のデーターから、目標の速力と針路を算出して衝突の危険性の有無を判定するものである。
いま、目標の速力と針路が判明すれば、これによって自船に最も近づく点CPA(Closest Point Of Approach)と、そこに到達するまでの時間TCPA(Time to CPA)を計算することは容易である。
このCPAとTCPAを、あらかじめ自船の状況に応じて設定してある目標の最小最接近点距難(Min.CPA)及びそこに到達するまでの最小最近点時聞(Min.TCPA)と比較して、衝突する危険があるかどうかを判定するわけである。