るまでの時間、すなわち距離lを、相対速力VRで割った時間(l/VR)をTCPA(Time to CPA)という。また、OCは最接近点までの距離で、RCPA又はDCPA(最接近点距離)という。ただ、一般的には単にCPAということが多い。また、このようにして作られた三角形を“衝突三角形”と呼んでいる。
実際には、このとき計算機に入れられたそれらのデーターから、捕捉した相手船の真の針路と速力及び自船に最も近づく距離(CPAという)とそれまでに要する時聞(TCPA)などが計算される。その結果は、操作者の求めに応じてディジタルで表示されるとともに、相手船の針路と速力はCRT上にベクトルの線などで表示される。
衝突の予防には、衝突の予測とその回避の二面が考えられるが、極端にいえば、衝突の予測は複数の船舶が同一点を占有する場合についての予測であり、回避とは、複数の船が同一点を占有しないように操船することである。実際に操船する場合には、単なる点ではなくてある閉塞された領域を考える必要があり、これをCPA(Closest Point of Approach)という概念でとらえている。また、予測に関してはCPAに到達するまでの時間が必要になり、これをTCPA(Time to CPA)として考え、これらによって衝突の危険を判断する。
このCPAがゼロになるということは、すなわち、両船が衝突をすることであるが、これを避けるために、操作者は現況における自船の能力を考慮して、あらかじめCPAとTCPAとに適当な値(例えば自船から1海里以内に30分というように)選定しておくと、この値以下になると音響警報を発するとともに、表示上でもその衝突のおそれのある船がどれであるかを、点滅などの表示によって知らせる。
更に、過去における相手船の位置は8分以内(3海里レンジでは2分、6海里レンジでは4分、12海里レンジでは8分)の4点以上の等時間間隔の輝点で表示できなければならない。この表示は、過去にその船が針路又は速力の変更をしたかどうかの判定に使用される。ある種の機器では、上述のベクトル表示のほかに、あらかじめ設定された衝突の危険範囲などの特殊な図形を表示面に出すこともあり、この図形は衝突の危険状態の判定に使用される。
このように衝突を予測と回避の二つの観点からみると、予測する場合には相対速度のベクトルに対して、また、回避する場合にはアスペクト(注)※等を知るために、それぞれに真速度のベクトルが必要になってくる。
相対速度のベクトルと真速度のベクトルとの関係を図示したのが図5・8である。