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ところが、漁業の場合には、海の中に数え切れないほどの品目があるわけです。おのおのが一つのシステムをつくって生活しているわけです。そういうものを利用する仕方としては、決して特定な相手、特定な種類、特定な魚貝に努力を集中してはいけないわけです。そういうものを満遍なく、広く浅く利用するのが漁業のコツなわけです。そのコツをやろうとすると、えらい手間がかかります。手間がかからない方法は何かというと、一番売れて儲かって、とりやすいものに努力が集中するわけです。

最近の日本の沿岸漁業は不振だといわれています。私もよく沿岸の漁協にお邪魔しますが、まさに不振です。どうしようもないくらい不振です。

どうしてこんなに不振になってしまったのかというと、いろいろな理由はあると思いますが、最大の理由は、漁業が特定な漁業タイプ、それから当然タイプが特定されますから、対象になっていく魚は乱獲になります。それは当たり前の話です。

昔やっていた漁業で今生き残っている漁業はほとんどないです。最近の漁業は、お調べいただければ、すぐおわかりになりますが、どこの漁村へ行きましても、場所によっておおよその見当をつけて行きますと、例えば、瀬戸内海だったら、どこへ行っても、聞かなくても、小型底引きが主要な漁業だとわかっているわけです。ですから、小型底引きをやっているんだな。そんなことは漁協の人に聞かなくたってわかってしまうわけです。それくらいみんな小型底引きになってしまっている。それは日本海でもそうです。ズワイガニがとれなくなった。あそこは大変な底引きの操業区になっているわけです。

こんな話をしても、皆さんは漁業はおわかりにならないかもしれませんが、底引きと巻き網と船曳き、小型定置網、もう一つ最後に、イカの一本釣り、この五つが今の日本の漁業を支えているわけです。ですから、どこでもそのうち一つをやっているわけです。ほかの漁業ははやらないですから、その五つの漁業の対象になっていないお魚は、資源が減っているわけがないです。

ところが、全体として資源が減っている。「漁業白書」にもそう書いてある。資源が減っているのはわかったから、どうして減ったのか、何がどういうふうに減っているのか、それはやはりちゃんと書かないといけない。私は日本周辺の漁業資源がそういう意味でそんなに減っているとは思っていない。漁業のやり方さえ変えれば、もっと多くの種類のものが手に入ると考えています。

過去一年間、あるいはこれから一年間でもよろしいですが、肉を食べる人は除きまして、おたくでお魚を食べる日がございましょう。奥さんがお魚を買ってくる日があります。そのときに、買ってくるお魚の種類を一年間ずっとつけてみてください。ほとんど変化がないはずです。目をつぶって三種類ぐらいの名前をいうと、必ず当たってしまう。それぐらい我々が食べているお魚も消費が集中している。皆さん、そういうふうにお感じになりませんか。

昔はもっとたくさんの魚を食べていたでしょう。昔の魚屋さんは、旬のお魚はくるくる回転していたのです。時期的にお魚が変わったでしょう。だから、一年間通すと、お魚の種類がず

 

 

 

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