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産が高く、南のグループに生産が薄ければ、品物は北から南へ流れるわけです。そういう格好で低開発国、あるいは開発途上国は今食糧をいろいろな形で開発国から買っているわけです。

ただ、その中で一つだけ南のグループから北のグループへ流れているものがあるわけです。開発途上国から開発国の方に流れている輸出量の多いものが一つだけあるのです。それが魚類、水産物です。水産物だけは、実は逆に南のグループから北のグループへ流れます。輸入量が少なく輸出量が非常に多いです。

これはどういうことを意味しているかと申しますと、南のグループの生産が多いから北のグループに流れているというのではないのです。そうではなく、お魚をとって、つまり開発途上国にとってお魚をとるということは、そのお魚を食べることではないのです。お魚をとって売ってお金にすることです。それは日本が相手にしております東南アジアの諸国の実態をごらんになればおわかりになると思います。例えば、日本がもしエビの輸入をとめてしまったら、経済的に困ってしまう国はたくさんあるわけです。それを反映しているわけです。

つまり、浪花節的にいえば、東南アジアの国々、あるいは開発途上の国々は、お魚は食べたいけれども、実はそんなことをしていたのではお金に困ってしまう。穀類も買えない。だから、穀類を買うためには、お魚をとったら売らねばならないという状態です。ですから、お魚だけは逆に動いているということになります。

つまり、これを見ても、お魚の供給は非常に不自然な動きをしているといわざるを得ない。いつまでも開発途上国がお魚を売ってお金にかえている時代はそう長くは続くまいという感じがいたします。

 

これはいささか余談になるのですけれども、私はお米の専門ではございませんので、わからないので、むしろ皆様方に問題としてお考えいただいた方がいいのではないかなと思うのですが、日本では、三年間ぐらい豊作が続くとお米が過剰になって大問題になり、今でも減反をやります。

ところが、さっき私が申し上げましたように、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは、大量の穀類、コースグレインを生産しているわけです。あそこで余剰というのは余り出ないです。ですから、減反をしようなんて話にはならないです。

足りないときの話になると、日本の場合は、四年か五年前にございました。お米が半分ぐらいしか生産できなかった。そうするとパニックになってしまうわけです。四年前のご経験をちょっと思い返していただきたいのですが、スーパーへ行ってお米を売ってくれといっても売ってくれませんでした。私の近所のお米屋さんなんていうのは、最近は一週間に一遍ぐらい電話がかかってきて、お米を届けに来るのですけれども、当時はとてもお米なんか売ってくれなかったです。そのかわり、スーパーへ行きますと、肉はたくさんあるし、野菜はたくさんあるし、イモは売っているし、お魚はたくさん売っている。食糧危機とか食糧が足りなくなったなんて意識は全くないわけです。だけど、お米だけが足りなくなると、日本ではそういうパニックが起こってしまいます。

 

 

 

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