化があるのだろう。それは無数にあって、追っかけるわけにはいかないのですが、大まかに申し上げまして、世界中の食文化がたくさんございます。我々は主食として米を食べる。アメリカ人は、主食として肉を食べる。南の島の人はタロイモを主食として食べる。南米の人はトウモロコシ。それぞれ違った主食を伝統的に食べているわけです。
しかし、長い、そして大きな意味では、世界中を見渡して、二つの大きな食体系の流れがあるように思います。この食体系の判断の仕方によって食糧問題は極めて大きく変わるわけです。一つは、肉食を中心にした食体系、もう一つは、お米を中心にした食体系の二つに分かれるように思います。
肉食体系と申し上げますと、これはもちろん主食が肉でございます。そして、その体系を持っている人たちは、ヨーロッパ人ないしはヨーロッパオリジンの人たちです。いってみれば白人です。これが肉食体系の人たちです。
肉食体系の人たちは、実は昔から肉食であったわけではないのです。ヨーロッパを起源にしていますから、アメリカ人やオーストラリア、ニュージーランドの人たちの遠い祖先もみなヨーロッパから来ているわけです。
ヨーロッパは、五百年ぐらい前までは、世界中で一番食べ物のないところでした。それはひどいものだったようです。そんなところでそんなにぜいたくな肉食などできるわけがない。森林を切っては小麦の畑にして、一生懸命パンを食べていたわけです。そういう生活では人口はふえないです。
そこで、何とかしてもっとまともなものが食べられるようなところに移りたいなと当時のヨーロッパ人は考えていたわけです。そのために大変な努力をしてきた。それが五百年前か六百年前の大航海時代になってくるわけです。つまり、外へ逃げ出して、新しい場所を探そうというのが目的だったわけです。それは見事に成功して、あちこちに新しい領土を見つけて、そこを植民地にしたわけです。
そこで何をしたかというと、一番最初は大変な略奪をするわけです。略奪をした後で、そこで農業をやるわけです。ところが、彼らの農業は、アジアの農業と違って、つくったものを食べるというよりも、つくったものを家畜に食わせ、結局は家畜をつくる。つまり牧畜民族ですから、牧畜業をやるための農業をあちこちに開発したわけです。それから数世紀の間に、ヨーロッパ人またはヨーロッパオリジンの人たちは、この食体系をつくるのに完全に成功したわけです。
現在は、いろいろ食糧難なんていう問題が出てまいりますけれども、実は食糧危機などというのは、ヨーロッパ人やアメリカ人にとっては余り切実な感覚がない。彼らが食べ物に困るなどとは、彼ら自身はちっとも考えていない。それはなぜかというと、きちんとした食体系を地球の上に実にみごとにつくってしまったからです。
つまり、大変な量のグレイン、主としてトウモロコシ、コウリャンといったものをつくって、それを牛に食わせ、ブタに食わせ、いろいろな家畜に食わせて、迂回生産をして、その肉を食べるわけです。そういう態勢はきちんとできてしまっています。それが一つの流れです。
この問題は最後のところでまた出てまいりますので、頭の中でその一点を覚えておいていただければ結構だと思います。