た沈むということが起ります。先ほどの大循環は、深層水の利用の問題とは直接関係ないように思われるかもしれませんが、からくりとしては、同じことであることがわかると思います。
(スライド6)
これが、先ほど申し上げました植物に対する栄養の一つ、窒素の深度分布ですが、縦軸が深さですが、一〇〇メートルぐらいのところで、窒素の量は表層ではわずか〇・二ぐらいです。それが二〇〇メートル、四〇〇メートル、六〇〇メートルと進みますと三〇ぐらいとなります。ということは、十数倍も下の方で多くなっています。深層水は二〇〇メートルよりも下といっておおよそ間違いがないというのは、これでもご理解いただけると思います。数百メートル下では表層に比べてずっと植物に対する栄養が豊富なのです。
(スライド7)
その低温性について、一目瞭然といってもよろしいかと思いますが、縦軸が水深で、二〇〇メートルぐらいのところは、夏は海水浴ができますが、冬はだれも入る人がいないということももうおわかりのとおり、ここでは一〇度以上の温度変化があります。北半球の中緯度と思っていいかと思いますが、いずれにしろ、表面は季節によって大きく温度が変わりますが、下の方はかなり安定して低温であるということになります。
(スライド8)
これは、先ほど申し上げた、いかに深い水が表面に比べてきれいであるかということであります。雑菌の数でありますが、一〇〇メートルのところでスケールが変わっておりますことにご注意いただきたいと思います。表層の雑菌数が一ミリリットルの中に雑菌数万個であるのに対して、深い方では数千個となり、一けたは優に少ないことがおわかりいただけると思います。
(スライド9)
そういう栄養に富んで、温度が低くて、非常にきれいな深層水が、自然界で実際に湧昇していることが知られています。そういうところでは、植物プランクトンが一挙に繁殖します良い漁場となります。そういうところは、先ほどの大循環と同じように、表層の海水の流れに対しまして陸や島などの影響を受けていて、流れのしもてで下から水が供給されることになります。こういうことが、自然湧昇を起こす理由の一つというわけであります。
(スライド10)
海洋科学技術センターでは、一九八〇年ごろから、こういう問題に注目したわけであります。本州の中央部、伊豆半島、相模湾、駿河湾、遠州灘、そして伊豆大島を含む一帯の観測衛星が撮った水温の分布を見てみます。黒っぽいところほど水温は低くなっています。伊豆大島の北側と南側と東側のところに温度の低いところが見られます。ここでは、西から黒潮が流れておりますから、その影響で、下から水温の低い水が上がってきているのです。
(スライド11)
八二年五月に、伊豆大島周辺で実際その現場で植物プランクトンの採集をいたしまして、植物プランクトンにとって大切な窒素、硝酸の量をはかってみたものです。それから、もう一つ