消費されてしまっていて、非常に少ないと考えてもいいと思います。
ここから先の深い部分では、そういう目に見えた有機物ではなくて、下に落ちていく途中で、再び無機物として海水の中に溶け込むというプロセスが行われるわけです。
(スライド4)
平均で約四〇〇〇メートルの地球上の海の九五%あるいはそれ以上の水は、先にも触れたように深層水と呼べると思います。それから、地球環境の問題でも、今話題になっておりますようなCO2の吸収の問題にいたしましても、地球の環境に大きな影響を与えている海の役割を考える上で、海の大循環を詳しく研究することが必要です。
今の海洋の海水大循環の考え方では、いわばエンジンに相当する部分は二カ所あります。それらは、大西洋の北と南のいずれも高緯度の所で、低温で高塩分の海水がまず沈み込むことでエンジンが始動されると考えられています。それらが一緒になって、やがてそれが大きくは南極大陸の周りの南極環流となりながら、一つはインド洋、それから太平洋というところに移動しつつ、周りの水とだんだんと混合しながら沈んでいくわけです。そうすると太平洋の中央部やインド洋で不足分の海水を補うような流れが生じて、表面の海水が動き始めるわけです。
それらの結果としまして、インド洋と太平洋のところで、四〇〇〇〜五〇〇〇メートルの底から深層水が上がって来て、そういう海水が赤道近くで温められて再び大西洋に戻ってくるわけです。最初のスタートは、この大西洋の北と南極海であって、それが動くことによって、世界じゅうの水が動き回るということが理解されているわけです。
(スライド5)
いよいよ海洋の深層水の話題に入りたいと思います。まず深層水とは表面の海水と比べてどういう特徴があるかということでありますが、一つは先ほど申し上げましたように、表面付近では、植物プランクトンから大型の魚類に至るまで、多くの生物によってかなりの栄養が消費されてしまうわけです。それに対しまして、そこから落ちる糞とか生物の死骸とかを含め、それがまた海水に溶け込むことで、海水の中の植物プランクトンをふやすために必要な窒素とか、リンといった栄養塩の材料は、表層の水よりもむしろ深層水の方に多いことになります。それから、いろいろなものが表層で消費されますので、それらに依存する例えばバクテリアのような、いわゆる雑菌類も、みんな上の方で消費されて、下の方には少ない。それから、当然のことですが、太陽光線のエネルギーの恩恵を受けませんので、水温は低くなるわけです。
したがって、海の構造といたしましては、表層の水は温度が高くて軽い。下の深層では、温度が低くて重いということで、軽いものの下に重いものがあるわけで、安定性は非常にいいといえます。しかし、今海洋の大循環のところで申し上げましたように、それが決して全く動かないわけではなくて、あるきっかけによって、その深層の水が表層に上がってくるということがあります。それから、海水の「再生産性」というのは、表層の水とまざり合って生物の生産に寄与し、それがある部分でま