海水の利用――特に深層水の効用について
海洋科学技術センター理事
堀田宏
ご丁寧なご紹介、ありがとうございます。
ただいまから、海水の利用、特にその深層水の利用ということでお話をさせていただきたいと思います。
(OHP1)
私ども海洋科学技術センターは、皆様方のご協力を得て、創立以来二六年たちました。その間、いろいろな課題について研究あるいは開発を進めてまいりました。その事業を進める考え方、深層水の利用もそうでございますが、海洋科学技術センター設立の趣旨は、多くの方々がご理解くださっているかと思いますが、二六年前当時、海洋開発が世界じゅうの一つの話題になっていたのであります。当センターは、そういう我が国の海洋開発を推進する中核的な機関ということで設立されたわけでありますが、その海洋開発を進めるには、多くの段階、目的を明らかにしていく必要があるわけでございます。
当然のことながら、海洋開発を進めていく上では、海というものを十分に理解しなくてはならないのはいうまでもないわけでありまして、この海洋基礎調査研究は、主として大学あるいは国立の研究機関といったように、各国ともいわゆるアカデミックな範囲の中で、一〇〇年以上にわたって研究が進められてきているわけであります。
典型的な例は、今から一二〇年以上前のイギリスのチャレンジャー号の世界周航がございますが、それが海洋の基礎調査研究の全くの先駆けをなしたものでありまして、その目的の一つは、海は一体どれぐらいの深さのものであるのか、もう一つ非常に大切なのは、海の中で生物は一体どれぐらいの深さまで生存しているか、それから、その海の深さと同時に、海の底はどんな地質から成っているかという大きな三つの目的を持って、海洋調査を始めたわけであります。その後、先ほど申し上げたような各国の基礎研究は、それぞれの専門分野、大学でいえば講座あるいは学会を構成するわけでありまして、例えば海洋物理学、海底地質学、水産学、海洋生物学あるいは海洋微生物学といったような学問として発達してまいったわけでございます。
しかし、近年私どもが生きているこの地球につきまして、実は知らない間に、我々人類が地球の上の自然環境にかなり影響