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束縛されることが嫌いな青年達は、直ちに、「何でだ」と文句を言ってきました。「海賊が出る海域では、船長の指示どおりに従って下さい」と答えると、決まって「こんな平和な時代に海賊なんて出てくるのですか」と……。これが世界の常識です。

「もし君達の言うとおりにして、海賊に襲われた時は、君達全員で責任をとってもらうよ」と言いますと「いやいや」と逃げてしまいました。

説明の仕方により、彼等は船長の命令には従順でした。

この間、船尾に当直を立て、舷側に海水ホースをセットし、夜間、船尾に向けて煌々とライトを点けて(海上衝突予防法では紛らわしい灯火を出してはいけないのですが)、航海しました。

両海峡では、今では煌々とライトを点けて、舷側に海水ホースを付けて、航海している船をよく見かけるようになりました。

ただ、それでも海賊に襲われている船が後を絶ちません。世界は平和と信じている人も少なくないのかなと思いました。

現在一番凶悪な海賊行為は、ブラジルで起きています。ラテン系の国では大なり小なりいろいろな場面に出くわしますが、当局に報告し、善処を申し出てもアスタマニャーナで何か手を打ってくれることは難しいことです。安全海域を設定しても、別に警備してくれるわけでもなく、その海域に投錨した船が海賊に襲われているのが現状です。

ブラジルのサントス港に入港する場合、パイロット乗船時間が決まるまでは、できる限り、錨地にはアプローチしません。日本船社の船は、外洋でドリフティングして、入港時間を調整して、難を逃れています。

一九九五年のソマリア沖で、一四件発生しています。これはソマリアの内戦に国連軍が駐屯していました。国連軍が現地を撤退した時に銃火器を置いていったと報告されております。ソマリア沖での被害は、一四件のうち、大半は銃火器でやられています。二件はバズーカ砲でした。

 

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昨年のデータを見ますと、一番多く被害を受けている国はノルウエーです。次にシンガポール、パナマ。船籍によるものだと考えられます。キプロス、リベリア、マレーシア、オランダと続きます。ノルウエー、オランダがなぜみすみすやられているかわからないのですが、乗組員の混乗化により命令系統がしっかりしていない場合、海賊対策はなかなか難しいのではないかと考えます。

襲われているタイプはいろいろです。乾舷が低く、海面からデッキまで、余り高さのない船には乗り込みやすいのです。

海賊対策を十分とっている船は、海賊達もターゲットにはしないようです。

 

本年も一月から三月までの間に、三四件の海賊行為が既に発生しています。そのうちアジアでの発生件数は二二件、かなりの数がアジアで発生しています。

昨日、入手いたしましたデータでは、五月三〇日、シンガポール沖を出港したシンガポール船籍の船が、インドネシアのポンテイアナック港(ボルネオの西岸)の沖合で、海賊に襲われ、

 

 

 

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