あと六七条、六八条は余り大きな問題ではないですが、六七条はサケ・マスの反対。降河性魚種といいますか、カタドロマス・スピーシーズ。海で生まれて、どこかの川、淡水に入っていって、そこで一生過ごして、また海に出て卵を産む。代表的なのはウナギです。これは海でいろいろな国が漁業をしているという実態がないので、規定はあるけれども、余り実体面に影響しない規定だと思います。
六八条は、定着性生物、これにはカニが入るか、入らないかということで昔いろいろもめたことがあるのです。要するに、次の海洋法条約の部である大陸棚資源に入れる。これは、今何が定着性の生物かどうかは、まだはっきりついていません。日ソの関係で一番大きな問題はカニだったのですが、大陸棚資源は、先ほど申し上げました各国が七六年に二〇〇カイリをやる前から、ソ連なりアメリカなりが大陸棚生物資源という考え方をもう既に主張していまして、大陸棚の範囲なんていう問題も当時からあったのですが、果たしてカニが大陸棚生物資源に入るか入らないかはいろいろ議論があって、いまだに決着がついていないと思います。しかし、いわゆる二〇〇カイリ漁業水域ができて、大体カニ漁業も沿岸国の主権的権利の中になったので、この条の持つ意味は余りない。大陸棚生物の代表的なのは全然動かない生物、具体的にはサンゴとか、岩にはびりついて離れないような貝類、そういったものをいうのが一般的だと思います。
前置きがちょっと長くなりましたけれども、いろいろもめた中で、確かに六三条の二項、いわゆるストラドリング・ストックと六四条の高度回遊性魚種は、一般的な規定はできたけれども、単なる協力を規定して実際にどうするか、どうなっているかは、まさに海洋法条約全体の決着の中ではっきりしなかったものであります。
他方、具体的には、これから後で触れますけれども、こういったストラドリング・ストックである、底魚にしろ、高度回遊魚であるマグロ類にしろ、海洋法会議云々の前から、国際的に非常に高度にというか、いろいろな国で利用されていて、有用な漁業資源で、かなりの部分がいわゆる漁業国際機関あるいは二国間の関係で規制措置がなされたものであるのです。
それで、海洋法条約が八二年にできて、その間、既存の漁業委員会が二〇〇カイリを前提として、あるいは二〇〇カイリを実際にしているので、そういった中で変遷していきますけれども、国連協定をつくる動きの出発点となったのは、実は一九九二年に行われた国連環境開発会議です。いわゆる地球サミット、通常UNCEDといっています。リオの国連環境会議で採択された文書はいろいろありますけれども、そこでアジェンダ21、二一世紀に向かっての地球環境問題に対処していく指針のような性格の文書ができたのですが、そこでも、やっぱり漁業問題が一つ大きく取り上げられました。
アジェンダ21の一七章で、いわゆる漁業というか、海洋生物資源の保存がありまして、そこで、二〇〇カイリの囲い込みという言い方がいいかどうかわからないけれども、二〇〇カイリの沿岸国主義は、もう既に定着して、沿岸国が実際に実施しているといった中で、そうすると、必然的に公海の漁業が盛んになって、規制しないと、高度回遊性魚類にしろ、ストラドリング・ストックにしろ、二〇〇カイリ内の資源もおかしくなると