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いうことで、この規定自体は非常に一般的だったわけです。

次に、六四条がもう一つの国連協定の対象としている高度回遊性魚種。海洋法条約では、魚類には限っていないのですが、便宜的に高度回遊性魚種といわせていただきますけれども、これはマグロなんかに代表されますように、広く海洋、すなわち公海と、いろいろな国の二〇〇カイリ内を含めて広く分布する高度回遊性魚種。こういうのも、要するに回遊水域全体にわたって国際的に管理しましょう、こういう規定でございます。

このように海洋法条約の規定は、一般的に協力して管理するという漠然とした規定なので、これをいかに実施するかということで、この通称国連公海漁業協定ができたということであります。

ついでに、この協定とは直接関係ありませんけれども、海洋法条約のいっているいろいろな特殊な魚の規定についてお話しします。六五条は、ちょっと変な規定ですけれども、マリン・マンマル、要するに海産哺乳動物。これは鯨なんかが代表のものですが、きょうは時間があったら若干触れてもいいですが、捕鯨のお話をするつもりではありません。捕鯨も大変大きな問題ですけれども、そういったマリン・マンマルについては若干特殊な感情なり、場合によっては「愛情」という言葉がいいかもしれないけれども、そういったものがあります。これは、私も海洋法条約そのものが何を書いているかわからないけれども、要するに、有効利用の原則は海産哺乳動物の場合は適用しなくてもいいよということ。要するに、反捕鯨なり、そういった人の主張で入ったということだと思います。

六六条が遡河性魚種といって、サケ・マス魚類の考え方。これは六三条もそうでしたけれども、この六六条も、海洋法条約そのものの交渉のときに最後の最後までもめた話で、基本的には、サケ・マスは川で卵を産んで、子供がかえって、海に出ていって、海で何年か暮らしてまた川に戻るということで、母川といいますが、生まれ育つ、あるいは産卵する川を有している国が一義的な関心と責任を有するというのが基本的概念で、海洋法条約ができる前から、サケ・マスは余り海でというか、川ないし河口の近くでとることが常識で、一般には遠洋ではとられていなかったのです。その唯一の例外が日本だったわけです。

これも、特に当時のソ連、アメリカ、カナダとの関係ですったもんだしまして、公海漁業は原則禁止、これは日本に当てはまるのです。ちょっと細かい規定は忘れましたけれども、日本がそこでいろいろ交渉をしまして、伝統的にとっている国の経済的な混乱を最小限にするとかいった規定をつけて、辛うじて限定的ながら公海サケ・マス漁業を維持できるような形でまとまったという話がございます。

日本の従来のサケ・マス漁業は、一九五三年にできた日米加漁業条約、通称INPFC(北太平洋漁業国際委員会)での規制、昔の日ソ漁業条約、一九五六年、日ソ国交回復と同時にできたものですけれども、そういったものの規制のもとで、いわゆる公海サケ・マス漁業をやってきたのです。その後二〇〇カイリ時代に入って一九九〇年の初めだったと思いますが、結局、先ほど申し上げた日米加の条約と日ソの条約が合体したような形で、日米加に、もうロシアになっていたと思いますけれども、ソ連を加えて、四カ国で公海漁業は原則禁止という条項ができたということであります。

 

 

 

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