遊性魚類の保存と管理に関する海洋法条約の規定の実施のための協定で、通称国連公海漁業協定と今までよく使っていたのですが、実はこういう言葉を少なくとも私はこれから使うのをやめようと思っています。
それはなぜかというと、この協定作成のため国連で協定交渉が行われてきたとき、そういう通称を使っていたのですが、一つのポイントは二〇〇カイリ内について、沿岸国でも制限すべきことはするんだというのが一つの大きなイシューでありまして、当然のことながら、沿岸国は自分のことは基本的に自分でやりたい。他方、遠洋漁業国は、二〇〇カイリ内でもやらせたいということで、後でちょっとお話しすることがあるかもしれませんけれども、この協定の重要な一部の規定は二〇〇カイリ内にも適用される、要するに、沿岸国もこの協定に基づいて、自分の二〇〇カイリ内で一定の制限ないし義務を負うことになったわけで、こういう言い方がいいかどうかわかりませんけれども、漁業国側がとった話なので、あえて国連「公海」漁業協定というのはやめようと考えております。
この協定の話に入る前に、これはもう皆さんご存じで、あるいは去年、日本が海洋法条約を批准した後、いろいろなオケージョンがあったので、海洋法条約そのもののことは、この場でも、あるいはいろいろな場でお話しがなされているので、余り詳しくはお話しする必要はないかと思いますけれども、海洋法条約そのもので、一体漁業はどうなっているかを簡単におさらいしたいと思います。
基本的には、海洋法条約は、皆さんよくご存じのように、第五部でいわゆる排他的経済水域を規定しておりまして、そこで基本的に漁業も入るわけです。漁業についても沿岸国が主権的権利を持つ。漁業にというか、海洋生物資源というんですか、主権的権利を持つという大きな規定がありまして、具体的には六一条から六八条ぐらいまでですか、それに漁業というか、海洋生物資源について規定があるわけです。
六一条、六二条は、二〇〇カイリ内で漁業類の保存義務、利用する権利を沿岸国に一般的に与えまして、それで六三条以降、言い方が悪いのかもしれませんが、特殊な魚、特殊という言い方が適当ではないかもしれないけれども、そういったものに個別の規定が設けられたわけです。そのうちの六三条がまず一つ、国連協定の対象となっている二〇〇カイリと公海にまたがって分布する魚類資源ということで、いわゆるストラドリング・ストックを扱っているわけです。
この六三条は、実は二つありまして、第一項の方では、複数の国の二〇〇カイリにまたがって生息するストラドリング・ストック。そういう意味では、公海には出ていないような資源を扱いまして、これは当該国資源が分布するEEZを持っている沿岸国の間で協力しなさいということで、具体的には、国連の協定には「対象外」とまで言えるかどうか、若干自信ないですけれども、余り念頭に置いたものではない。
第二項が特定の沿岸国の、これは複数であっても構わないのですが、二〇〇カイリとそれに隣接する二〇〇カイリ外の、すなわち公海に分布する資源、そういうものを管理して、それは基本的に国際的に漁業国と沿岸国が協力して管理しましょうと