握した上で専用船で現地入りし地域の微細構造の観測を行う事になって行くのではないだろうか。その上で時系列的な観測が更に必要となれば係留ブイを設置して次ぎの観測点に向かう事となるであろう。今回、カナダの研究機関を訪れたおりに多くの研究者に指摘された事のひとつは人工衛星データの有用性とそれが持つ大きな可能性であったし、ブイシステムを巧く扱う事で安全で効率の良い海洋観測が出来るのではないかと言う点であった。
Axys環境コンサルティング社のスケイ副社長は同社で開発しNOMADブイシステムを紹介した。一般的にブイシステムで得られた気象・海洋データはGOESサテライトを経由してGTS通信回線で各国のデータ・センターそしてWMOの中央センターに送られる。これまでに三機のブイがカナダのEEZ外の水深4000mの地点に10年に亘り係留されているが、保守点検は継続的に行なった以外に流失事故は無かった。この観測期間中に30m波を記録している。太平洋での流失事故は皆無であった。しかし、大西洋に設置したものは係留システムに多少の相違はあったものの、漁業活動が原因と思われる流失があった。Axys社ではいくつもの測定器を一つの係留系に装備するのは事故に遭遇する可能性が高いと経験的に判断している。
2.4 国際協力による海洋観測
カナダは国際協力特に発展途上国との密接な関係を確立したいとの立場からあらゆる機会を活用して協力関係を構築したいとの希望していた。近年、話題となることの多いGOOS(全地球的海洋観測システム)構築の計画は、これまでほとんど相互の協力もなく漫然と継続されて来た、各種の海洋観測を有機的に結び付け、海洋状況の予測・予報を迅速に行い、海運、水産、海洋レジャー等の多種の海洋産業に適切な情報を提供する事を目指したものである。これは単にルーティン化した海洋観測とデータ集積に留まらず、正確な海況予測・予報を可能とする海洋モデリングの分野での研究の推進までをも包括している。
今回面談したカナダの海洋学者達は日本との共同研究を北太平洋で展開したい希望を述べていた。これまで、北太平洋と言えば直ぐにサケ、マス、カニを連想していた我々であるが、海洋の成り立ちとその性癖を共に調べる事に関心を示す時が来たとの印象をうけた。