図7に海況予測が実社会に活用されている一例を挙げる。気象協会が行なっている北太平洋の三ヶ月間の海況予測図と最適航路の助言である。この情報は北太平洋に航路を持つ商船会社が購読しており、何人かの船長から最適航路に沿った航路を取る事で片道1ー2日程度の航海日数の短縮が可能との話を聞いた事である。片道7ー10日の航海でのこの経済的寄与は無視出来ない。僅か一例にしか過ぎないが海況の予測が正確におこなれる事で産み出される経済効果に我々はもっと注目すべきであろう。
3 むすび
以上の様にカナダの主要な海洋研究機関を訪問し、幹部職員、専門家と意見を交わし、事情を聴取して来た。限られた日程の為に必ずしも満足の行く調査では無かったかもしれない。調査に着手するまでは、文献や風聞を頼りに彼の地ではどんな素晴らしい着想で、どんな優れた観測機器が開発されているのかと考えていた。特に一般船舶をヴォランティアとして海洋調査船の一翼を担わしてしまう等とは想像も出来なかった。以下に気付いた点を我が国の現実と比較しながら列記して見る。
i) 海洋調査研究船
カナダの特殊事情によるものと思われるが、専用船の船令が高くなっている傾向は新船の建造が思うに任せない国家財政の問題もあるであろう。我が国の状況は研究者人口はカナダに比して多いとは言え研究船と名乗っているのは東大海洋研究所の淡青丸、白鳳丸の二隻だけとは言え、調査研究を目的とした船舶は、大型船に限ってみても、海上保安庁水路部の拓洋、海洋、昭洋、気象庁の凌風丸、海洋科学技術センターのみらい、よこすか、かいれい、金属探鉱事業団の第二白嶺丸などの新鋭船が揃っている。搭載観測機器にしてもカナダの船舶の殆どは多目的船として設計されており、測深器などの共通機器に留められている。乗船研究者が自分で必要とする測器を持ち込む形を取っている。これに比して同じく多目的船として建造された海洋研究所の二隻を除くと夫々の機関の目的に合致する専用船としての機器搭載がなされている。これは限られた分野の専門家から見ると大変に使い勝手の良い効率の良い研究船であろう。他方、分野が違う人種にとっては使い心地の悪い船舶となってしまう。マル