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ウットニイ海洋気象研究センター研究員はカナダ船籍の材木運搬船に我が国の環境研究所と共同で装備した同様システムによる海水の分析から水温、塩分、溶存酸素、pH,、存有機・無機窒素、リン、炭素などの測定をカナダ西海岸と日本との間で1995年3月以来行なっている。IOSでは同様の計画をカナダ・オーストラリア間で実施すべく船体工事を完了した時点で船会社の事情で船舶が配置換えとなってしまい計画は頓挫していると嘆いていた。

 

船体に進水時から取り付け工事を必要とする場合もある。ADCPタイプの流速計を船底に具備して航路を走りながら海流の速度、方向を連続的に観測しようと言う試みである。カナダに於いても1980年代後半にニューファウンドランドのグループが試みたが流速計を漁船に船外エンジンの様に取り付けたが、成功しなかった。その後国内の人事移動にともない中心人物が転出した為にこの計画は挫折してしまった。一方、我が国では東京・小笠原間の定期客船の船体に東北大学と海洋科学技術センターとでADCPタイプの流速計を取り付け黒潮横断を繰り返しつつ観測を続けている。黒潮系の総合的研究を行なっている。おそらく民間船に流速計を装備して流速の連続計測を行なっているのは本例が唯一のものと思われる。

 

Quester Trangent社のワット副社長は海底状況を簡便に調査する測器の紹介をした。船舶に既に装備されている測深器や魚群探査機の音源を利用し海底状況の識別に使用されるもので、装置の取り付けは一時間程度完了する。応用範囲としては漁業、海底生物(特に、貝類、藻類)、海底沈下物(機雷捜索など)、海底地質などの分野が挙げられる。水深3500m程度が使用限界の様であるが海況さえ許せば水深5000mでも使用例があるとの事である。小さな湾、港湾内での底質調査に活用できそである。

 

2.3 船舶以外の手段による海洋観測

 

これからの海洋学(海洋観測)では船舶以外の観測手段がより重要な役割を担う事となろう。リモートセンシングは短時間で地球上の海洋現象をを集約してくれるであろうし浮遊ブイや自動式ブイは先行して有用なデータを送り続けてくれるであろう。VOSデータなどである程度までの基礎的な情報は専用船を率いて現地に出掛ける以前に知識として取り込む事が可能になっているのだから専用船を用いての研究はこれからはより先鋭化したものとなるであろう。したがって、これからの海洋観測の姿は衛星データで調査海域の概略を捉えて、VOSデータで季節変動を把

 

 

 

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