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カナダにおける海洋調査の為の海洋調査研究船及び

一般船舶の海洋観測設備の調査研究

 

海洋科学技術センター

特別参事 北沢一宏

 

 

海洋を取り巻く諸現象が系統的に研究される様になったのはそれ程古い話ではない。海洋学と言う言葉ひとつをとってみても、当初は海水の動的・静的な性質を探求する海洋物理学を意味した。海を取り巻く自然環境である大気との関連や、海底地質、沿岸環境、海洋中の生物・非生物資源までもその対象とする様になったのはつい最近の事である。自然現象を注意深く観察し数量化した各種観測データの蓄積の上に現象を包括的に解釈出来る仮説を組み立てて行くのは自然科学の研究での常套手段である。海洋現象を解明する為には、海流、海水の温度・科学組成、塩分濃度と言った海洋の静的・動的性質を表現する諸要素を観測研究船で実地に観測する事が不可避である。

 

1961年10月に開催された政府間海洋学委員会(IOC)の第一回総会の開会宣言の中で当時のユネスコ事務総長であったレネ・マウーは「・・・英国研究船チャレンジャー号によって実施された世界で初めての海洋調査(1873-76年)では一隻の研究船によって膨大な新事実の収集が可能であった。しかし、現在では直面する多くの重要な海洋学上の問題の解決の為には多くの観測研究船による同時、そして綿密に調整された行動が必要である。・・・」と指摘した。事実、一研究所、一ヶ国で行う海洋観測には人的・資金的な面での限界があり、海洋現象のより深い理解の為には国際的に組織された継続的な海洋観測が不可欠である。海洋観測研究の為に設計された専用船により得られる質の高いデータの集積は最も要望される処である。しかし、これらの研究船にだけ頼っていたのでは地球全体の現象を統一的に解釈する為には常にデータの不足と言う現実に直面してしまう。これを補完する意味で企てられたのが世界中を縦横に航海している一般船舶に簡便な装置を装備したVoluntary Observing Ship(VOS 篤志観測船)により観測データの増加を図ると言うShip-Of-Opportunity Project(SOOP 便宜船計画)である。

 

 

 

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