日本財団 図書館


本調査研究では、対象をカナダに絞り調査を実施した。カナダの海洋研究の歴史は1883年のカナダ水路部(Canadian Hydrographic Service)の創設にまで遡る事が出来るが、中心は水産資源の研究であった。しかし、近代的な海洋研究が組織的に始まったのは大西洋岸にベドフォード海洋研究所(Bedford Institute of Oceanography:BIO)が1962年に開設されてからである。我が国に於いても水産研究を除いた海洋研究を取り巻く社会事情は比較的類似している。それまで全国各地に展開していた水産試験所・水産研究所や海洋気象台とは異なる研究機関としての海洋研究所が全国共同利用研究所として東京大学に設立されたのが、この時期であった。この問題点の解消の為にカナダでは専用船による観測が手薄になる部分を一般船舶によるSOOP観測で補完しようとしているとの報に接し、報告者は調査研究を開始した。調査の主たる部分は1997年9月24日から30日の間にカナダ各地を訪問し聴取したものであるが、これに先立ち8月30日より9月6日の間セイント・ジョーンズ(ニューファウンドランド)にて開催されたオーシャン・サミットに出席の機会に面談聴取した情報も合わせ用いている

 

1. カナダの海洋環境政策と主要海洋学研究機関

 

カナダは東部は大西洋、西部は太平洋そして北部は北極海と言う様に、その国土は海洋と三面で境を接している。カナダは属する島々の海岸線をも含めると250,000kmと言う恐らく世界最長の海岸線を有し、世界最長の内陸水路と弧状列島、世界第二の広さの大陸棚を有している。カナダの排他的経済水域は4,697,000km2に達する。前述の様に水産資源の供給源としての海洋の比較的古くから着目はされてきた。本格的な海洋(実質は水産ではあるが)研究の始まりは1893年の水産管理評議会(Board of Management for Fisheries)の設立と言えるであろう。以降、1957年の国際地球観測(IGY)を機に海洋科学研究者達は積極的に国際的海洋研究に参加を始めた。1962年のベドフォード海洋研究所の設立は国家レヴェルでの海洋研究への取り組みの始まりと言えよう。その後、長い歴史を持つナナイモ海洋生物研究所に加えて太平洋岸ヴィクトリア市に海洋研究所(Institute of Oceanography:IOS)を新設した。極域の研究は大陸部にあるウィニペグ市にある北極研究所が管轄しているが、海洋分野の観測研究はBIOとIOSで協力しながら進めている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION