ア)旅客運輸
多島国家であるフィリピンの場合、島峡間海運は大陸国の道路であり鉄道であるといった役割を果たしている。従って、多くの港湾では旅客の扱い量がかなり多い。ところが、相当規模の旅客輸送量がある港湾でも旅客ターミナルを有する例は稀である。旅客の流動が貨物の流動と混在しているケースが極めて多く、危険であるばかりでなく貨物・旅客両者の円滑な動きを阻害している。既に整備計画が樹立されている港湾もあるが、旅客ターミナルの整備は繁急を要する。
イ)Ro―Ro輸送開発
水上輸送体系の中で効率的な輸送機関として先の中期開発計画(1987-1902)で提案されたのがRo―Roシステムである。
これに対し、JICAの調査では全国42航路を調査対象に今後の整備の優先度、整備の進め方等が検討されている。既存の航路の他にビサヤ地域の拠点都市を結ぶ航路を加え、合計12航路を第1優先グループとし、この第1優先グループの整備によってパンフィリピンハイウェーに続くセブを中心としたビサヤ地域が互いに連結されることになる。次ぎに第2優先グループとしてミンダナオを起終点とする6航路を含む14航路の整備によりビサヤ地域とミンダナオ地域の社会経済的連携が強化されることになる。
ウ)内貿コンテナネットワーク
フィリピンにおける港湾の交通量はこの10年間伸び悩みの傾向を示してきた。しかし、この中で、コンテナ貨物の動きは停滞の期間も短く、順調に推移してきている。このため、コンテナ取扱量が増加している主要港湾においてはコンテナ化への対応が図られてきた。さらに、セブ港の約1.2kmの既存岸壁の前出し計画、ジェネラルサントス港の岸壁150m延伸など今後に向けた対応も図られつつある。しかし、コンテナ貨物の伸びは今後とも期待され、いずれの港湾においてもかなり先を見越した対応が必要である。カガヤンデオロ港の場合旅客ターミナルや穀物ターミナルの開発が予定されており、それらと合わせコンテナの取扱を今後考えていく必要がある。
(3)地域開発
地域開発計画もその多くが海運・港湾と絡む。特に工業開発を軸としたものの場合、港湾開発は重要な位置を占める場合が多い。この範疇に属する計画としてはカラバルソン開発計画、カガヤンデオロ・イリガン回廊開発計画、南コタバト開発計画、メトロセブ開発計画といった計画がある。これらの計画についてJICAやその他機関により調査が実施されてきており、これら事業の進捗度合をみつつ対応を図っていく必要がある。